2.マネジメントツールとしてどう活用するか【目標の連鎖】


◆ 「維持目標」と「達成目標」

 会社はそれぞれの会社に固有の「経営理念」にもとづいて経営されています。経営理念は「Vision」「Mission」「Value」に分解して示すこともあります。このVMVの具現化をめざして経営活動が展開されます。
 経営理念を実現するために,経営層は全社の経営方針を示し,経営目標を設定します。部門長はトップの示す経営方針・経営目標に沿って,部門方針・部門目標を設定します。課長は部門長の示す部門方針・部門目標に沿って,課方針・課目標を設定します。一般層は課長の示す課方針・課目標に沿って,個人目標を設定します。これは方針あるいは目標がトップダウンとして上位者から下位者に下ろされる縦の指示命令の流れといえます。この上から下への目標のブレークダウンは,会社の存続に不可欠の「維持目標」を形成するためのものです。
 一方,目標の達成には具体的な行動が必要です。そのために,個人目標に対応した個人の行動計画,課目標に対応した課の実行計画,部門目標に対応した部門の事業計画,経営目標に対応した全社の経営計画を策定します。

 各段階の計画はそれぞれの現場の実態を反映した実現可能性の高いものでなければなりません。また,それぞれの計画は,個人や部署の努力で達成できるものであることが必要です。この,下から積み上げていくボトムアップによって計画を実現していくことが,それぞれの立場での「達成目標」になります。

 目標管理はトップダウンによる経営の「維持目標」と,ボトムアップによる現場の「達成目標」の2つの流れが相互に行き交う仕組みです(図表3)。まさに,マネジメントツールそのものであると理解する必要があります。


◆ 目標の連鎖 ―― 上位目標との統合

 経営トップから個人に至るまでの目標の連鎖をつくりだすことが目標管理の運用では重要です。
 トップは「経営理念」にもとづく「経営目標」を全社員に周知する必要がありますが,それには第一に部門長の「部門目標」とリンクさせることが大切です。部門長の設定する「部門目標」は,トップとともに十分に練られた,経営目標の達成のための戦略を具体化する事業計画につながるものでなければなりません。管理者(課長)層の設定する「課(職場)目標」は,部門長と戦術について議論が尽くされた,実行計画として実現性の高いものになっていなければなりません。そして,一般層は課長と,課目標あるいは職場の重要課題について十分に話し合い,行動目標としての「個人目標」を設定します。
 それぞれの段階で下位者は,上位者の示す上位目標を受け,現場の実態を踏まえた個人の目標を設定します。このことによって,トップと部門長,部門長と課長層,課長層と一般層との間で,経営上必要なトップダウンの「維持目標」とボトムアップの「達成目標」がリンクすることになります(図表4)。したがって,それぞれの間で十分な議論がなされ,双方が合意のうえで納得できる目標を設定することがポイントです。この手続きを経て,トップダウンの経営目標と,ボトムアップの個人目標の間に連鎖がつくられます。組織としての経営目標の達成と,個人としての経営に対する参画の方向性は統合されることになります。

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