1.目標管理の意義と目的を確認しよう【目標管理とは】


◆ 目標管理は自主目標・自主管理

 目標管理はドラッカーが唱えたManagement By Objectivesを日本語に訳したものです。略して「MBO」と呼ばれることがあります。もともとはManagement By Objectivesにand Self Controlが続いています。つまりMBOは,目標に動機づけられた「自主管理」をすすめるところに大きな意義があります。
 目標管理は,既に1960年代半ばから一部の企業で導入,展開されていましたが,1990年代になって「成果主義」の人事評価の業績評価に活用されるようになって以降,多くの企業で取り組まれるようになりました。目標管理をひと言でいえば「組織目標と個人目標を統合させ,自主管理することによって,目標を達成するマネジメント手法(制度)」ということができます。

◆ 目標管理制度の4つのねらい

 目標管理の目的は「一人ひとりのメンバーが,組織と個人にとって価値ある目標を追求することで,組織の発展と個人の成長をともに実現すること」にあるといえます。経営管理の立場からの「目標管理制度のねらい」は次の4つになります(図表1)。
 第1は「経営目標の実現」です。本来個人目標と組織目標は連動しています。個人目標の達成は組織目標の達成につながります。一人ひとりが目標を達成することによ

って,経営目標の達成を実現します。第2は「職場の活性化」です。目標達成には上司と部下の連携や組織的な取り組みが不可欠です。職場目標という共通の目標に組織として取り組むことによって,職場は活性化し

ます。第3は「個人の能力開発」です。目標を達成するには,一人ひとりの能力の向上が必要です。そのためには主体的な自己啓発の取り組みが求められます。そして,第4は「公正・公平な評価」への活用です。目標の達成度を基準に評価するので,評

価基準にあいまいさの入る余地が少なくなり,評価に対する公平性を確保することができます。

◆ 目標管理制度の仕組み

 目標管理制度の仕組みを考える前に,まずマネジメントについて考えてみましょう。一つのまとまりのある仕事を想像してください。まず,「計画」(Plan)をたてます。次に,成果につながる方法や手段を考え,「実行」(Do)します。そして,その結果について「評価」(Check)し,問題があれば「措置・対策」(Action)をとり,次のステップにつなげます。いわゆるPDCAのマネジメントサイクルをまわすことです。
 目標管理の展開も,同様に考えることができます。まず,期首に目標を設定します。次に,期中は目標の達成のために行動します。そして,期末にその成果を評価し,措置・対策をとり,次期の目標設定につなげます。つまり,期首の「目標設定過程」は計画(Plan)の段階,期中の「目標達成過程」は実行(Do)の段階,期末の「成果評価過程」は評価(Check)および措置・対策(Action)の段階ということができます。「目標設定過程」は経営計画(上位目標)に沿ったよい目標の設定が,「目標達成過程」は確実な実行が,「成果評価過程」は客観的に自己評価し,措置・対策を行い,次期の目標に反映させることが大切です(図表2)。
 管理者の役割は,それぞれの過程で,よい目標を設定するための「方針の提示」をし,目標の達成につながる「支援活動」を行い,その成果を「公平に評価」することにあります。目標管理制度の運用は,半年あるいは1年をサイクルにした,マネジメントサイクルをまわすことにほかなりません。

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