3.目標管理の運用上の課題をどう克服するか【目標管理の課題】


◆ 管理者が留意すべきことがら

 組織目標と個人目標の統合について,管理者が留意すべきことがらを整理しておきましょう。ともすると目標の設定は,個別の事情や本人の能力を無視した,管理者による一方的な押しつけがあったり,逆に,本人任せっぱなしの放任だったり,といった傾向がみられました。本来,目標管理は,経営目標の達成という目的を実現するものでなければなりません。マネジメントツールとしての目標管理の運用は,とりわけ管理者の果たす役割が重要になります。管理者と部下が一体となって目標を設定し,その達成に取り組む必要があるからです。
 そのために,管理者は経営課題や職場の重要課題を示し,本人の事情や能力を踏まえたうえで,十分に話し合う必要があります。そのうえで,双方が納得できる目標を設定します。納得できない目標は,モチベーションの低下につながります。また,結果だけを考えた目標は,挑戦的とはいえないものになりがちです(図表5)。

◆ 「評価基準」の事前の合意が重要

 目標管理の達成度評価は,ジョブ型(成果型)の人事評価制度だけでなく,職能資

格制度における能力主義型の人事評価制度においても,人事評価の中心的な役割を果たしています。人事評価は,結果の評価である「成績(成果)」と,取り組み過程の評価である「プロセス(情意と能力)」の組み合わせによって行います。このうち,「成績(成果)」の評価

は,目標の達成度を合理的な基準で評価することが原則です。
 評価の納得性を高めるためには,達成度の「評価基準」に

ついての事前の合意が重要な要素になります。「評価基準」は,@具体的な目標が設定されている,A組織の目標と個人の目標の整合性がとれている,B達成水準がはっきりしている,C達成水準は事前に決められている ―― などの条件を満たす必要があります。
 要するに,何をどれだけやれば,どのような評価が得られるか ―― ということを,評価者である管理者と被評価者である部下は,目標設定の段階で十分に話し合い,合意しておくことです。

◆ 目標管理の課題 ―― うまく機能しない原因

 目標管理の仕組みは複雑なものではありません。しかし,シンプルであるだけに,その成否は運用次第であるところに難しさがあります。目標管理がうまく機能しない原因をみておきましょう(図表6)。
 第1に,いちばん問題になるのが目標のノルマ化です。目標の名のもとに,一方的に達成すべき数字(ノルマ)を与え,その結果だけを管理しようとすると,ノルマ管理に陥ります。目標管理は結果管理ではなく,目標の設定から評価に至るプロセスのすべてをマネジメントすることです。
 第2に,仕事と目標の乖離です。「仕事は仕事」「目標は目標」という考え方は問題です。目標は仕事そのものに直結したものでなければなりません。
 第3に,設定した目標しかやらない,という傾向がみられることです。目標として設定していなくても,やるべき仕事はたくさんあります。取り組み過程やチームへの貢献度も評価の対象にすべきです。
 第4に,期首の目標設定時と期末の成果評価時だけの目標管理になってしまっている場合です。形だけの目標管理ではやる意味がありません。
 第5は,評価者の信頼性が低い場合です。先に述べたように納得できる,公正・公平な評価が行われなければ,部下は取り組む意欲をなくします。

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