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話の構成しだいで説得力は変わる
「ビジネスでは結論から先に話をする」のが原則であり,伝わりやすい話し方の基本です。ビジネス会話において相手が最も知りたいのは,結論だからです。最初に結論を知った上で,その経緯や理由を聴くことにより,相手の理解は深まります。また,仮に経緯や理由を説明する時間が足りなくなったとしても,最も大切なポイントだけは伝えることができます。
実は,前段の文章も「結論+理由」の順に説明しており,話の流れとして,難なく理解できたのではないかと思います。このような順序で構成する話し方を「結論先出し法」といい,何かについて説明する場合は効果的です。
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「商圏,立地,競合などの市場調査をした結果,新店舗の候補地として,A地区とB地区とC地区があり,世帯数の多いA地区は集客には向いているのですが,競合が3社も集中するため,収益性ではB地区に及びません。一方のC地区は ―― 」
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この説明ではじれったくなり,「それで結論は何なの?」と相手の表情が険しくなりそうですが,結論先出し法に変えれば,印象はがらりと変わります。
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「商圏,立地,競合などの市場調査をした結果,新店舗の候補地はC地区が最有力と考えます。というのも,国道に近接するC地区は交通量が多く,さらに3ヵ所で大型マンションの建設が予定され,2年後には世帯数もA・B地区を上回るからです」
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また,結論先出し法の応用が「PREP法」です。これは,Point(結論),Reason(理由),Example(具体例),Point(結論)の頭文字から取った文章構成法で,最初に結論を述べてから,次に結論に至った理由,さらに具体例をあげて,最後にもう一度,結論を述べるという話の構成になります。
プレゼンテーションや商談,ビジネス文書の作成など,より説得力を増した説明が求められるときは,PREP法の構成で話を組み立ててみましょう。「結論+理由」の後,理由を裏づけるための具体例をあげて,最後に,もう一度結論で念押しすることにより,相手へのメッセージ性がより強調されます。
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P(結論):
「仕入れ業者選定の件ですが,今回はC社でお願いします」
R(理由):
「といいますのも,価格が一番安いということです。さらに納期が短いと いうメリットもあります。また ―― 」
E(具体例):
「実は,大阪支店でもC社を利用しています。私の同期が担当なので様子 を聞いてみると非常に評判がよく,『お薦めの業者だ』といっておりま す」
P(結論):
「以上の理由から,今回はC社以外には考えられません。ぜひC社でお願 いします」
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結論を後出ししたほうがよいケース
いかなる状況でも結論先出し法が最善かといえば,そうともいいきれません。仮にあなたの伝える結論が,相手の望んでいるものではなかった場合,経緯や理由を伝える前に対話をシャットアウトされてしまう恐れもあります。「そういう結論なら,この先の話を聴く必要はない」と早い段階で判断されてしまうリスクです。
たとえば,あなたがセールスパーソンで,顧客を訪問したとします。そして,「結論+理由」の順序で話をするため,こう切り出しました。
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「システム導入のお見積りですが,年間で130万円になります。内訳は ―― 」
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この時点で顧客は結論の金額だけで判断し,「高い。ウチでは無理」と即座に交渉を打ち切るかもしれません。そこで,あえて結論を最後に回し,「理由+結論」の順に話す「結論後出し法」で最初に商品やサービスのメリットを訴えるのです。
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「システムの導入によって製造部全体の労働時間が年間で約4000時間削減でき,平均時給で換算すれば800万円以上の経費削減になります。今回ご提案するシステムの導入費用は,メンテナンスパックも含めて年間で130万円ですみます」
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結論(金額)を伝える前の足場固めとして,理由(相手が享受するメリット)を先に伝えたほうが,交渉はスムーズに妥結する場合もあるのです。
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