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業務開始前に委任と支援の範囲を話し合う
部下に業務を担当させるときは,できるだけ独力で遂行させることが大切です。部下が自らの意思で立案し,実務にあたりながら自分のスタイルを確立していくことは,本人に備わった各種能力を引き出すことにつながります。
かといって,最初から「1人でやってみろ」と業務を丸投げするのでは,部下に過剰なプレッシャーがかかり,不安と不満を募らせるだけです。業務を担当させる前に,打ち合わせの時間を十分に取り,業務と部下の力量が見合っているか,遂行するうえで何が問題になるか,どのような支援ができるかなどを話し合い,部下が安心して取り組めるように下準備を行うことが上司の責務です。
部下と話し合いの場をつくり,部下の習熟度や適性などを把握することは,その後の業務の成り行きに大きく影響します。本人の話を傾聴し,上司からも質問を繰り返しながら部下に委任する作業と,サポートが必要になりそうな作業を見極めなければなりません。
同時に,部下の悩みを聞き出すことも大切です。「○○部の担当者と相性が悪くて,話しづらい」などといった,他人から見れば他愛もない心配事こそ重要です。むしろ,そのような業務の周辺にある差し障りが,部下にとっては大きな悩みとなり,それを軽減するために他部署の担当者にあらかじめ口添えし,仕事環境を整えてあげることもサポートの一環だといえます。
こうしてさまざまな業務を経験する中で部下は仕事のコツを覚え,その成長と反比例するように上司はサポートを徐々に減らして部下の自立を促します。
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業務を細分化し,できる作業に集中させる
部下の業務上の障害を軽減する手法の1つは,業務を具体的な作業に細分化し,各作業を,部下が「できる作業」と「できない作業」に分類することです。
例えば,「全社会議で新商品について発表する」業務は,下図のように細分化できます。ここでは大まかな分類にとどめていますが,実際に行う場合はさらに作業を分割したほうが効果的です。
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例:「全社会議で新商品について発表する」業務の細分化 |
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@ 新商品の内容を 理解する |
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できない |
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・商品の特性や機能,データの意味を理解していない ・商品開発部の人が気難しく,ガイダンスを受けにくい |
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A 発表のアイデアを 考える |
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できない |
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・経営者が求めている情報を把握していない ・文章作成に不慣れで発表内容をまとめられない |
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B 資料を作成する |
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できる |
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・プレゼン用ソフトの扱いや画像編集には慣れている ・デザインセンスはよく,簡単なイラストも描ける |
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C 発表する |
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できない |
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・あがり症で人前で話すと言葉に詰まりやすい ・資料の棒読みで聴衆から共感が得られにくい |
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このように,業務を各作業に細分化し,「できない作業」はできない理由を明らかにします。そして,まずは部下を「できる作業」に集中させることで得意分野を伸ばし,本人に自信を持たせるのです。
一方,「できない作業」に関しては,部下にとっての難易度を測り,レベルに応じて「苦手な部分のやり方を教える」「苦手な部分だけ手伝う」「その作業を任せず,ほかの人材に代える」などのサポートで対応します。「できない作業」の負担を軽減したうえで,できるところは自力で業務にあたらせます。その場合も,上司は部下に何を期待し,どのようなスキルを身につけてほしいのかを具体的に伝えなければなりません。
こうして部下が経験を重ねるにしたがって,上司はサポートを少しずつ減らしていき,最終的には業務のほぼすべてを自力で遂行できるように指導してください。
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・話し合いを通じて,部下が自力で行える作業とサポートの必要な作業を分類する ・業務は個別具体的な作業に細分化し,自力で遂行できる作業に集中させる ・部下の成長に応じて少しずつサポートを減らし,自力で行える作業を増やしていく |
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