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現代の職場における3つの弊害
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により,2020年には労働市場で384万人の労働力が不足していましたが,2025年には505万人,2030年には644万人の人手不足が生じると予測されています(下図参照)。多くの職場で1人あたりの業務量が激増し,社内のDX※ によって作業の効率化を推進しています。しかし,そうした職場環境では以下のような弊害が起こりやすく,その対策についても講じる必要があるでしょう。
@ 作業の本質の理解不足
膨大な作業量に日々追われていると,「割り振られた作業を終わらせればOK」という価値観になり,作業の目的や位置づけも知らずに働いている社員が現れます。作業の本質を理解していない例をあげれば,ある数値を集計している社員に,「この数値は誰が何のために使うのか?」と聞いても,「前任者の指示通りに集計しているだけなので,その先の利用目的はわからない」と,平然と答えてくることがあります。
このように作業の本質を知らないままでいると,通常の作業でエラーが生じても異変に気づかない,問題発生時のイレギュラー対応ができない,本来の目的に沿った改善策を考えられる人材が育たない,などの問題が生じてきます。
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これらの諸問題を解決するには,部下に作業を依頼するときに,作業手順だけでなく,目的と意味,業務プロセスにおける位置づけを必ず説明してください。
例えば,データベースからA商品の売上ファイルをダウンロードする場合,「A商品の月別売上を事業部長が分析し,製品開発の資料サンプルにするので,その数値を集計するための作業」とまで言い切るのです。
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※ Digital Transformation の略。データとデジタル技術を活用し,業務や組織,プロセス,企業文化・風土を変革し,競争上の優位性を確立すること。
A システムやツールの理解不足
あるシステムを使った作業を難なくこなす社員に,「そのシステムで別の作業をしてほしい」と依頼したところ,全く手をつけられなかったというケースがあります。
近年はシステムやツールが多機能化し,忙しい中でそれらの取扱説明書に目を通すことはしません。必要な機能だけをかいつまんで使っているため,システムやツールに備わる各種機能を理解していない人が大半です。その結果,システムに不具合が発生した際に応急措置を考えつく人がいなく,ささいなトラブルでも開発ベンダーの技術者が来るまで作業が中断するなどの問題が起こります。
そこで,職場で使用するシステムやツールには担当者をつけて,機能や操作を覚えさせることが必要です。もちろん,主要な機能や基本操作を一通り理解する程度でよく,取扱説明書に目を通して実際に操作し,不明点は社内外のくわしい人に教われば十分です。それ以降は職場内の問い合わせに応じて操作を調べ,知見を蓄えていけば,緊急時でもその担当者が対処と指示役を担うことができます。
システム担当に任命したら,就業時間内にその学習時間を確保すること,システム担当としての働きを人事評価に反映すること,それが上司として当然の責務です。
B コミュニケーションミスの増加
メールやチャット,SNSの普及,またはリモートワークによって,社員どうしの対話は激減しました。電話や対話はタイミングが難しいので,テキストでやり取りしたほうが無難ですが,テキストだけですべてを説明したり,すぐに相手の反応を確かめたりするのは困難です。その結果,意思疎通にズレが生じやすく,後で作業を一からやり直すようなコミュニケーションミスの問題も起こります。
周囲に遠慮して電話や対話を避ける社員もいるので,ミスを防ぐルールとして,打ち合わせや電話,リモート会議などの直接対話もセッティングするように上司から部署の全員に指示します。特に重要な案件に関しては,「相手と直接話した?」と確認してください。
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・作業依頼では,作業の目的と意味,業務プロセスにおける位置づけを説明する ・部署にシステムやツールを導入する際は,システム担当者を設けて主要な機能や基本 操作を一通り理解させる ・重要な案件ほど打ち合わせや電話,リモート会議などを組み込むように指示する |
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