10.ビジネスシーンでNGの間違った敬語


尊敬語と謙譲語の混同,誤用に注意

 敬語は,「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3つに大別されます。このうち,丁寧語は文末を「です」「ます」「ございます」にすればよいので,比較的簡単に使い分けることができますが,尊敬語と謙譲語はルールが少し複雑です。尊敬語は目上の人など敬うべき相手の動作に使い,謙譲語は自分(もしくは自分たち)の動作に使います。この2つを混同して誤った敬語を使っている人が少なくありません。  例えば,「ご自由にいただいてください」は,尊敬語にすべきところを謙譲語にしている間違った表現です。「いただく」は「食べる」の謙譲語(自分側の動作)であり,尊敬語(相手側の動作)の場合は「召し上がる」と表現します。相手に食べることを促しているので,正しくは「お召し上がりください」になります。以下にあげる動詞も,尊敬語と謙譲語の使い分けを間違いやすいのでご注意ください。

基本形

尊敬語

謙譲語

 言う

 おっしゃる

 申す/申し上げる

 いる

 いらっしゃる

 おる

 聞く

 お聞きになる/お耳に入る

 お聞きする/伺う/拝聴する

 行く

 行かれる/お出かけになる/いらっしゃる

 伺う/まいる

 来る

 お見えになる/お越しになる/いらっしゃる

 まいる

 見る

 ご覧になる/お目通しになる

 拝見する

 考える

 お考えになる/ご高察になる

 拝察する

 与える

 くださる/お与えになる

 差し上げる

 読む

 お読みになる

 拝読する

 寝る

 お休みになる

 休ませていただく

 会う

 お会いになる/会われる

 お目にかかる

 借りる

 お借りになる

 拝借する

 食べる

 召し上がる/お食べになる

 いただく/頂戴する

 知っている

 ご存じである/知っていらっしゃる

 存じている/存じ上げる

 買う

 お求めになる

 買わせていただく

 座る

 お掛けになる

 座らせていただく

 着る

 お召しになる

 着させていただく

 思う

 お思いになる/おぼし召す

 存じる/拝察する

 帰る

 お帰りになる/帰られる

 帰らせていただく/おいとまする


二重敬語,過剰敬語を使ってはいけない

 尊敬語を重ねて使うことを「二重敬語」といいます。かつての古文では二重敬語がよく用いられましたが,現代では間違った敬語表現とされています。
 例えば,「お話しになられましたか?」は,尊敬語の「お〜になる」と「〜れる」を重ねて使っている二重敬語なので間違った表現です。正しくは,「お話になりましたか?」もしくは「話されましたか?」と表現します。
 また,「いらっしゃられました」は,「来る」の尊敬語「いらっしゃる」と,尊敬語の「〜れる」を重ねた二重表現です。正しくは,「いらっしゃいました」になります。
 「卒業させていただきました」は,過剰敬語の表現です。「〜させていただく」は相手に許可をもらうことなので誤り。正しくは,「卒業いたしました」になります。

間違った敬語の表現

正しい敬語の表現

 お話になられましたか?

 お話になりましたか?/話されましたか?

 ご到着になられたら,準備します。

 ご到着になったら,準備します。

 いらっしゃられました。

 いらっしゃいました。

 卒業させていただきました。

 卒業いたしました。


使い方を誤ると不自然な敬語になる

 先述のように,丁寧語は文末が「です」「ます」「ございます」で終わります。しかし,使い方を誤ると不自然な敬語になるので注意しなければなりません。
 特に,「ございます」は上品な印象のある言葉なので多用しがちです。「多数の商品を取りそろえてございます」という表現は,小売店などでよく見聞きしますが,実は間違いです。「〜してございます」という言い方はやや不自然です。正しくは,謙譲語「おる」をとり入れ,「多数の商品を取りそろえております」になります。
 丁寧語だけでなく,謙譲語の誤用で不自然な敬語になる場合もあります。例えば,「申し上げる」は話す相手に対して敬意を表す表現なので,「私は鈴木と申し上げます」というのは誤り。正しくは,「私は鈴木と申します」になります。

間違った敬語の表現

正しい敬語の表現

 多数の商品を取りそろえてございます。

 多数の商品を取りそろえております。

 取り扱ってございますか?

 取り扱っていらっしゃいますか?

 私は鈴木と申し上げます。

 私は鈴木と申します。

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