2020年に予期せずパンデミックとなってしまった新型コロナウイルスは,私たちの生活様式に大いなる変化をもたらし,VUCA(Volatility;変動性,Uncertainty;不確実性,Complexity;複雑性,Ambiguity;曖昧性)な時代に,より拍車をかける形となりました。そのような現代において,巷間のビジネスリーダーたちの間には,古典回帰への志向が高まっているように感じます。おそらく,何をもって正解とするのかがわからない不透明な時代に,彼らは「温故知新」の考え方に沿って,最適解への手がかりをそこに見出そうとしているのでしょう。
『孫子』とは何か?
私は,ビジネスコーチという仕事をしています。クライアントには,経営者や企業の管理職の方々が多いのですが,時折,古典の一部を自身のモットーにしていたり,会話の中に古典を引用したりする方に出会います。その古典の中でよく耳にするのが,これから紹介する『孫子』です。果たして『孫子』は,経営者や管理職といったビジネスリーダーたちにどのような影響を与えているのでしょうか。
『孫子』は2,500年程前の中国(春秋時代)において,武将・軍事思想家であった孫武による兵法書であり,一般に「孫子」とか「孫子の兵法」と呼ばれています。軍事的な思想や哲学,戦略・戦術を記したもので,以下の13篇から構成されています。
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