8.プログラミング的思考を導入した後の業務事例

業務プロセスの問題点と改善点を社員全員で共有

 前項で紹介したクライアントの業務プロセスを,筆者がどのように変えていったのか紹介します。最初に従来の業務プロセスをプログラミング的思考に沿って分解・検証し,そこで浮かび上がった問題点を社内で共有する必要がありました。そして社員全員に業務進行上の問題点と改善点を確認させる研修を繰り返した結果,1年ほどかけて作業効率を大幅に高めることができたのです。以下がその実例の一部です。

フローチャートを作成し業務内容を明確にする

 最初に取りかかったのは,業務プロセスを明確にすることでした。下図は業務プロセスの中で問い合わせの連絡から商談の初期ヒアリングまでの過程を抜粋したもので

す。このような図を「フローチャート業務フロー)」といいますが,実際の業務プロセスを分解し,作業内容を全社員に対して可視化見える化)することが大切です。
 そして商談の成り行きをシミュレーションし,顧客対応,担当者の割当,他部署への引継ぎなどを細かく取り決めました。さらに,こうした業務プロセスの情報入力をする担当者を決めたほか,全体を統括する総合窓口も設置するなどしたことで,業務がスムーズに運ぶようになってきたのです。

フォロー体制が築かれ,顧客へのアプローチも強化

 フローチャートができたことで,デザイン部門や工事部門,経理部門などの担当する業務内容が全部署で共有できるようになりました。社員全員がこのフローチャートを定期的に確認しているので,人員不足や作業の遅れも周知されるわけです。
 すると,上司の指示を待たずに,社員が自らサポートに回るようになったり,ITが苦手な社員を得意な社員がフォローしたりするなど,チームとして作業のベクトルが同じ方向へ向かい,会社全体のコミュニケーションも活性化したのです。

 フローチャートによって顧客へのアプローチが不足していたことにも気づきました。連絡がない顧客への対応を社員で話し合った結果,見積りの30日後にハガキを送るという新しい対応を追加したのです。
 ハガキの送付により,申し込む気がある顧客全員に積極的なアプローチができるようになり,売上増が見込めるようになりました。コロナ禍で業績の低迷する同業者が多かった中,クライアントが売上を伸ばせたのは,全社員がプログラミング的思考で業務を見直し,能動的に取り組んだ功績といえるでしょう。

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