7.プログラミング的思考を導入する前の業務事例

業務が毎回行き当たりばったり

 ここまでプログラミング的思考の基本的な捉え方を述べてきましたが,次に業務においてプログラミング的思考を取り入れる以前と,取り入れた後の具体的な事例を紹介します。実際のところ,プログラミング的思考を取り入れなくても業務自体は回っていきますが,非常に効率が悪く,社員どうしのやりとりや報連相も少なく,会社全体が疲弊してしまう場合が多いのです。
 そこで,筆者自身がコンサルタントとして請け負った業務改善の事例をもとに,プログラミング的思考の導入前と導入後の変化を見てもらいます。以下は,サンプルケースの主な概要です。

会社情報:創業20年の造園会社で,年商は約1億5000万円,従業員数は約15人。業務の属人化が顕著で,部署間,部署内での社内連携を取れていないのが課題。集客率や契約率を上げるために,複数の業務効率化システムを導入していたが,それらが十分に運用されないまま,売り上げも低迷が続いていた。

● 担当者以外に業務を把握していない
 業務効率を上げる各種ソフトウェアは用意されていましたが,業務の工程表には各社員の担当業務の情報が書かれていたり書かれていなかったりで,担当者の業務履歴

は残されていても,実際の業務進行とはズレが生じていました。
 特に問題なのが,その日の業務として誰が現場に出て,どのような作業を行っているのかわからないことでした。せっかく業務を効率化するシステムがあっても,当日の作業は社内のホワイトボードに時間帯が記されているのみ。しかも,ホワイトボードに記された業務ではなく,急に紛れ込んだ別の作業を行っている社員もいて,誰がどこで作業をしているのかも正確に把握できていない状態でし

た。その結果,担当者しか対応できない連絡や案件が入った場合は,その人を手分けして探し回るなど時間の浪費が多く,各人の業務が次の段階に進みにくい状況が続いていたのです。
● 顧客対応を社内で共有せず,フォロー体制もない
 商談,契約,発注,施工など,顧客対応がどの段階まで進んでいるのか,担当者以外に把握できていないことも問題でした。当然,社内のフォロー体制は期待できず,自分の業務は自分だけ,担当者に見えている世界だけで仕事が完結していたのです。
 そのため,手が足りないとき,進捗に遅れが生じているときも「手伝いましょうか?」「私が代わりましょうか?」という言葉が誰からも出ず,みんなが自分の仕事で手一杯でした。
● 作業の全体像を担当者本人がわかっていない
 今行っている作業が完了したら次はどの作業に出向く,という業務の段取りも社内に取り決めがなく,担当者が各自のペースで行い,作業の遅れに気づいたら慌ててそこを埋めるという混乱が日常化していました。具体的な作業工程が設定されていなかったので,自分が今,作業全体の中でどの段階にいて,残りの作業がどれくらいある

のかも把握していませんでした。
 工程表がないのは,外部から見ればかなり異例ともいえますが,社内で慣習化していると「それが当たり前」になってしまい,誰も変だと気づかないまま,長年放置されてきたのです。

● 顧客からの信頼を失いつつあった
 このクライアントは,社長に対する顧客からの信頼で成立している会社でした。社長自身が顧客から直接仕事を受注していながら,会社に伝えるのを忘れていることもあり,数ヵ月後に「○○の件,どうなった?」と聞かれてから慌てて動きだすのが定例化していたのです。
 上記のような仕事を全社的に続けていれば,クレームもたびたびのこと。顧客からの信頼を失って縁を切られたことも少なくなかったといいます。そこで筆者は,プログラミング的思考を取り入れた業務の進行をクライアントに提案し,全社員に徹底してもらうことにしました。

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