3.【ロジカルシンキングの基礎B】全体像やつながりを押さえる

 論理的に説明しても納得してもらえないのはなぜか

 事実と結論の間をつなぐ方法として,帰納法と演繹法を紹介しましたが,これだけで論理的な説明ができるわけではありません。
 例えば,私が「業務Aに毎月10時間かかっている。非効率なので業務Aを効率化すべきだ」と主張したところ,上司に「業務Aだけで見れば非効率なようだが,業務Aを行うことでチーム全体が効率化されている」と反論されたとします。
 この場合,私が見ているのは「業務Aの効率」ですが,上司は「業務Aを含むチーム全体としての業務効率」を見ています。つまり,着目している範囲が違うのです。このような状態では,仮に帰納法・演繹法を用いて「業務Aを効率化すべきだ」という意見を論理的に構成したとしても,納得してもらえません。
 「その意見がどんな文脈で主張されたものなのか,全体像の中でどんな位置づけにあるのか」が相手と共有できていなければ,納得してもらえないのです。
 そこで,全体像を押さえる方法のひとつとして,「因果関係図」を紹介します。


 因果関係図とは?

 因果関係図は,原因と結果をいくつも矢印でつなぎ合わせたものです。例えば,「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざを聞いたことがあるでしょう。
 なぜ,風が吹けば桶屋が儲かるのか,その全体像を因果関係図で表すと図表3のようになります。

 このように因果関係図を書く際は,次のポイントに注意してください。

(1) キーワードの羅列ではなく,主語・述語・目的語を伴う文章にする。各要素は,事実を,
 短く簡潔に,かつ具体的に書く。
(2) どこからスタートしてもOK。2つ以上の要素を書き出し,それを「だから」という矢印で
 つないでいく。間がうまくつながらないときは,因果が飛躍しているので,ほかの要素をつ
 け足してみる。できるだけ丁寧に,たくさんの要素を加えるとわかりやすくなる。
(3) 「○○だから××」のように文章が長くなると,ほかの要素とつなげにくくなる。文章が
 長くなるときは,「○○である」と「××である」の2つに分ける。
(4) できるだけ具体的に書く。抽象的な表現になっていると,その前後に矢印をつなげにく
 い。
  「売上が落ちている」(抽象的)
 ⇒「商品Aの売上が昨年比で80%になった」(具体的)
  「業務のやり方が非効率」(抽象的)
 ⇒「書類AとBで,同じ内容を二重に入力している」(具体的)
(5) 自分の思い込みで作成するのではなく,できる限り一次情報を集めてから作成する。一般論や聞きかじった知識だけだと,前後に矢印をつなげにくくなる。関係者へのヒアリング,現場の観察,事実の確認などをして作成する。


 因果関係図を用いて考えることのメリット

 因果関係図を作成すると,自分が見ている範囲だけでなく,物事の全体像が押さえられるため,自分の主張で検討の必要な要素が見えやすくなります。また,因果関係図をつくることで,相手にも現状の問題の相互関係や影響範囲を共有してもらえます。その結果,自分の主張がどのような背景から成り立っているのか,また,どのような影響を及ぼすかを相手にイメージしてもらいやすくなるのです。
 さらに,因果関係図を作成することで,打つ手がない状況を改善できるケースもあ

ります。問題に直接,手を打てなくても,遠因に手を打つことができるとわかるからです。多くの場合,トラブルや問題点というのは,複雑な事象が絡み合っています。因果関係図をつくり,全体像やつながりを確認することで解決の糸口がつかめるのです。

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