6.DX推進のステップ ▶11の問いかけに対応しながら変革をすすめていく


◆ DX推進のための経営のあり方,仕組み

 日本で企業のDXがすすまない原因のひとつに,「どうすすめたらいいのか,わからない」という手順への理解不足であるようです。そこで,経済産業省が2018年12月に発表した『デジタル・トランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver.1』をもとに,DX推進のステップについて解説します(一部抜粋)。
 同ガイドラインは,「(1)DX推進のための経営のあり方,仕組み」と「(2)DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」で構成され,(1)は以下の5つが実現できているかどうかを問いかけた上で,変革に取り組むことを提言しています。

1.経営戦略・ビジョンの提示
 想定されるディスラプション(破壊的イノベーション)を念頭に,データとデジタル技術の活用によって,どの事業分野でどのような新たな価値(新ビジネス創出,即時性,コスト削減等)の創出をめざすか,そのために,どのようなビジネスモデルを構築すべきかについての経営戦略やビジョンが提示できているか。
2.経営トップのコミットメント
 DXを推進するにあたっては,ビジネスや仕事の仕方,組織・人事の仕組み,企業文化・風土そのものの変革が不可欠となる中,経営トップ自らがこれらの変革に強いコミットメントを持って取り組んでいるか。
3.DX推進のための体制整備
 経営戦略やビジョンの実現と紐づけられた形で,経営層が各事業部門に対して,データやデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを構築する取り組みについて,新しい挑戦を促し,かつ挑戦を継続できる環境を整えているか。
4.投資等の意思決定のあり方
 DX推進のための投資等の意思決定において,@コストのみでなくビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか,A他方,定量的なリターンやその確度を求めすぎて挑戦を阻害していないか,B投資をせず,DXが実現できないことにより,デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか。
5.DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力
 ビジネスモデルの変革が,経営方針転換やグローバル展開等へのスピーディーな対応を可能とするものになっているか。


◆ DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築

 (2)については,以下の6つを問いかけ,変革に取り組むことを提言しています。

6.全社的なITシステムの構築のための体制
 DXの実行に際し,各事業部門におけるデータやデジタル技術の戦略的な活用を可能とする基盤と,それらを相互に連携できる全社的なITシステムを構築するための体制(組織や役割分担)が整っているか。
7.全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
 全社的なITシステムを構築するにあたっては,各事業部門が新たに導入するITシステムと既存のITシステムとの円滑な連携を確保しつつ,ITシステムが事業部門ごとに個別最適となることを回避し,全社最適となるよう,複雑化・ブラックボックス化しないための必要なガバナンスを確立しているか。 
8.事業部門のオーナーシップと要件定義能力
 各事業部門がDXで実現したい事業企画・業務企画を自ら明確にしているか。
9.IT資産の分析・評価
 IT資産の現状を分析・評価できているか。
10.IT資産の仕分けとプランニング
 IT資産の仕分けやどのようなITシステムに移行するかの計画ができているか。
11.刷新後のITシステム:変化への追従力
 刷新後のITシステムには,新たなデジタル技術が導入され,ビジネスモデルの変化に迅速に追従できるようになっているか。また,ITシステムができたかどうかではなく,ビジネスがうまくいったかどうかで評価する仕組みとなっているか。

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