3.職場で解決すべき問題をどう特定するか


◆さまざまな問題がある

 会議で部長から「われわれの部門が抱えている問題にはどのようなものがあるだろうか。来期方針の参考にしたいので,忌憚のない意見が聴きたい」と質問されました。
 江原課長は「特に大きな問題はありません。売上目標も達成しています。エラーやトラブルも前年に比較すれば減少しています。大きな事故もありませんでした。チームメンバーも順調に育っています」と答えました。大石課長は「わたしは問題だらけであると考えています。今日もクレーム対応に追われていました。誤配送も多く発生しています。ドライバー不足による配送の遅れも解決していません」と答えました。河野課長は「少子高齢化のうえに,コロナ禍による需要の低迷が当社の業績を直撃しているのが問題であると考えています」と答えました。木下課長は「わたしたちのほうには問題はありません。問題なのは会社の体制です」と答えました。
 4人の課長の意見に対して部長は「きみたちの問題に対する考え方を聞いていると,とても心配になってくる。江原課長は,問題はないと考えていると言ったが,“問題”というものをどのようにとらえているのだろうか。大石課長はいま起きている問題にしか言及していない。河野課長の問題は,抽象的な一般論で,当社が抱えている取り組むべき具体的な問題とは言いがたい。木下課長は自分たちでなく会社の体制が問題と考えている。もっとリーダーとして管理職として考え,取り組むべき問題を考えてもらいたい」と語気を強めて話しました。リーダー,管理職として考え,取り組むべき問題として,以下の4つの選択肢から適切であるとはいえないものを1つ選び,その理由を説明してください。


 選択肢 

@ 何度か経験したことがあるなど,自身の経験で把握し設定した問題
A 自分たちが問題の主体であり,自分たちが取り組むべきことが明らかに
  なっている問題
B これから起きること,対応しなくてはいけないことが含まれる,将来の
  問題
C 本来のあるべき姿,ありたい姿と現状のギャップが明らかな問題


 考え方のヒント 

 リーダーに期待される役割の1つに,“問題の発見”と“問題解決”があります。特に担当している仕事や部門の“問題”は,そのリーダーにしかわからないものも多くあります。ところが,仕事上の“問題”をどのように定義し,発見すればよいのかを理解していないリーダーも多いようです。
 まず,“問題”とは何かを確認しておきましょう。図表3-1に示したとおり,“問題”は「現状の姿」と「目標」である「ありたい姿」「あるべき姿」のギャ

ップです。たとえば「業務の引き継ぎでお客様に迷惑をかけることがある」は,一見“問題”のように思えますが,これは「現状の姿」を指しています。この場合の「目標」である「あるべき姿」は,「業務の引き継ぎをして

もお客様に迷惑をかけない」になります。そうすると,「現状の姿」と「あるべき姿」のギャップである“問題”は,「お客様に迷惑をかけない引き継ぎができていない」「お客様に迷惑をかけない引き継ぎの仕組みが必要だ」となります。このように,経験則や思い込みから離れ,客観的に「現状の姿」を把握し,より具体的な「目標」を設定することで“問題”は明らかになります。
 また,問題には図表3-2のように2つのタイプがあります。

 リーダー,管理職であればいま起きている「発生型の問題」だけでなく,未来の問題である「創造型の問題」にも注意を向ける必要があります。選択肢Aの「自分たちが問題の主体」,すなわちリーダー自身が問題解決に積極的に取り組むことになる問題は適切なものになります。選択肢Bは創造型の問題,選択肢Cは「ギャップを明らか」にする,すなわち“問題”をより明確にするという点で適切です。選択肢Cは,自身の経験則から離れ,客観的に「現状の姿」を把握し,具体的な「目標」を設定して問題を明らかにしようとしていないので,不適切になります。

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