実際の会社の損益計算書を読んでみよう

◆ 損益計算書の年次の変化を比較してみる

 それでは,ケーススタディとしてケンタッキーフライドチキンで有名な,日本KFCホールディングス株式会社の損益計算書をみていきましょう。次の表は,直近5年間の売上高と損益の年次変化をまとめたものです。

※日本KFCホールディングス株式会社ホームページ掲載連結決算資料より作成。
※それぞれの項目に前年比,各段階の利益率および販売費及び一般管理費は販管費率を追加した。税引前当期純利益は掲載していない。
 まず売上高の推移です。同社のホームページ掲載資料によると,売上高は2015年3月期以降700億円〜900億円の間で推移しています。2018年3月期に大きく売上高が減少しています。これは,日本KFCホールディングスが運営していた宅配ピザの子会社ピザハットを売却したためです。宅配ピザ事業は,ライバルのドミノピザが戦略を転換し,店舗数を倍増させ,持ち帰りピザを半額にするなどしたため,その影響を受け,売上,利益とも減少傾向にありました。
 売上総利益は売上総利益率でみると横ばい傾向です。販売量や販売単価を見直す必要があるかもしれません。この点を明確にするためには客単価やフライドチキンなどの購入数量を調べる必要があります。
 営業利益は2015年3月期には前年比で−63.2%,6億7千万円まで減少していますが,これはピザハットの業績悪化の影響のためでしょう。2017年3月期はピザハット事業がコスト削減効果で持ち直したことで約26億円に回復しました。2018年3月期は売上高,営業利益,当期純利益ともに大きく落ち込みました。ピザハット事業の売却,原料高とアルバイトなどの人件費高騰,さらに客数減が影響したためでしょう。
 2019年3月期は売上高が743億円(前期比1.2%増),営業利益は22億円(前期比362.5%),当期純利益は約21億円(前期比255.4%)と回復しました。メディア等でも報道されましたが,いままでのケンタッキーフライドチキンの主要顧客は40代〜50代の主婦で,「ハレの日」用にフライドチキンを購入する人が多かったといわれています。これは,フライドチキンの単価がファストフードにしては高額であったことも影響していました。
 そこで,500円ランチなどの日常利用の促進と,新奇性のある新商品を展開したことが売上高,営業利益アップにつながったと思われます。

◆ 競合他社と利益率を比較してみる

 競合他社との利益率を比較してみましょう。比較する相手は,ケンタッキーフライドチキン同様ファストフードチェーンの老舗であるハンバーガーチェーンの日本マクドナルドホールディングス株式会社です。同社の2018年12月期の主要なPLの数字を右表に示します。

 売上高などの規模はケンタッキーフライドチキンよりはるかに大きいため,利益率で比較したほうがわかりやすくなります。ケンタッキーフライドチキンは,売上総利益率はマクドナルドに比べて高いのに,営業利益率がかなり低くなっています。販管費率がマクドナルドの9.7%に対し,40%台になっています。さらに販売費及び一般管理費の項目をチェックし,販売方法・管理方法の現状と課題を明確にする必要があるかもしれません。

日本マクドナルドホールディングス株式会社※日本マクドナルドホールディングス株式会社ホームページ掲載連結決算資料より作成。

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