事例1 会議で貴重な時間が失われていないか


● X社が開催している会議の実態
 X社は大阪市にある化学薬品を扱う中堅の問屋で,組織は,総務部,経理部と,取扱品目に応じて編成された営業1部から4部の計6部構成となっています。
 従業員は36名(総務部4名,経理部4名,営業各部28名)で,年齢構成は20代 6名,30代 8名,40代 7名,50代 11名,60代 4名です。
 X社では,次のような社内会議を開催しています。
【月次会議】
 毎月1回,主に営業成績について報告しあいます。原則として各部の係長以上が参加することになっていますが,会議での報告は営業各部の部長が行い,必要に応じて担当者が補足説明を行うため,参加者は20名程度になります。
【定例会議】
 毎週火曜日の朝に全従業員が一堂に会し,今週の業務予定や課題など全員で共有すべき事項の確認を行います。
【人事考課会議】
 年1回の昇給・昇格(4月)と年2回の賞与の支給(6月・12月)についての査定を調整する会議です。原則として課長以上が参加します。
【予算会議】
 年度末の収支見通しと新年度の予算を決定するもので,原則として各部の係長以上が参加します。
 会議の運営は,社内規則で総務部の所管事項となっていることから,開始時刻の決まっている定例会議以外はすべて,総務部が参加者のスケジュールを調整して開催日時を決定しています。
 また,資料の準備も総務部が行っています。定例会議の場合,資料はいつも席上配付しています。最新の得意先情報を盛り込むため,会議開始前に印刷しているからです。そのほかの会議では,資料の印刷は前日のうちに行っています。資料の分量は,多いときで20枚程度に及ぶこともあります。

● 総務部員と営業部員の会話
 大学卒業後に入社して7年目になるA君は総務部に所属しており,会議のスケジュール調整と開催日時の通知を行っています。中堅社員として,会議の準備には手慣れたものがあります。
 営業3部に所属する入社4年目のB君は,外回りが中心の仕事構成です。月次会議では,部長からの指示により,ときどき発言をしています。
 ある日,会議を運営する側のA君と,会議に参加する側のB君が社内の懇親会でたまたま同席したとき,2人の間で会議の話題になりました。
 A君:うちの会社はいつも会議ばかりやっている気がするな。
 B君:資料の印刷は全部Aさんがやっているから,大変ですよね。
 A君:月次会議なんかまだいいほうだよ。僕は人事考課のとりまとめもやっているじゃ
    ない。12月の賞与査定が終わったと思ったら,すぐに昇給・昇格査定がはじまる
    だろう。毎年この時期は,査定と会議の仕事が重なって,結構負担が大きいよ。
 B君:私は,会議の回数がそんなに多いとは思わないですが,時間が長くて疲れます。
 A君:確かに,営業は月次会議にずっと座っていなきゃいけないからね。必要なときだ
    け同席すればいいような気もするな。資料だって,参加者が増えればその分印刷
    しなきゃならないし,そもそも月次会議の資料は枚数が多すぎるよ。
 B君:月次会議の前の日は憂鬱ですよ。部長たちは,自分の部がどれだけ経営に貢献し
    ているかアピールしたいから,説明の時間も長くなるんですよ。終わりの時刻も
    決まっていないから,ほとんど半日がつぶれています。ほかの部の資料を見たり
    ,話を聞いたりするのは勉強になるんですが…。
 A君:定例会議もね,予定どおりにはじまらないのはストレスだよ。営業部はいつも誰
    かが遅れて来るからなぁ。
 B君:得意先に立ち寄ってから出社するでしょう。話が長引くと,どうしても会議に間
    に合わなくなるんです。
 A君:20分も遅れることがわかっていたらはじめちゃうけど,数分程度だと,みんなじ
    っと座ったまま全員そろうのを待っているでしょう。あれも何とかならないか
    な。


 この日は懇親会の席上だったこともあり,お互いに問題提起をするだけにとどまりました。

 解 説 ―― 解決策のヒント

【 設問1 】
 会議を行う頻度があがることは,それだけ会議の目的である情報の共有や意思決定を達成するための機会が増えることを意味します。その反面,だらだらとやっていてはマンネリ化を引き起こし,伝達すべき事項が見落とされたり,いつまでたっても結論が導き出されなかったりするといった弊害が生じます。いつも会議ばかりやっていると感じられたら,このことに思い至るべきです。ある程度回数を確保できる場合は,1回の会合に費やす時間は短く設定すべきでしょう。
 一方,なかなか関係者が集まる機会が得られないときは,少ない回数の中で意見交換をすすめていかなければなりません。したがって,どうしても1回の会合に費やす時間を長くとらざるをえません。ただし,この場合でも,だらだらと続けることは非効率です。
 それでは,会議の時間は短ければ短いほどいいのでしょうか。
 労働組合の活動が盛んだった時代,労使が膝詰めで行っていた団体交渉は,深夜から明け方にまで及ぶ,まさにエンドレスの会議でした。もちろん,これは「会議」というより「交渉事」ですから,同じ土俵のうえで比較すべきものではありませんが,このように,いたずらに結論を急ぐことなく十分に意見を戦わせ,合意にこぎつけることに意義がある場合もあるのです。
 一般的には,回数は少なく,時間も短くというのが会議の理想のあり方でしょう。会議を頻繁に行うときはできるだけ手短に済ませ,なかなか開催する機会を持てないときは内容の充実に努めるというように,いずれの場合でも効率性を高めることが重要です。
 特に,交替勤務の職場では,なかなか関係者全員がそろう機会がありません。こうした職場では,参加する人の手間を考慮して,交替のタイミングを利用して短い会議を重ねるなどの工夫が必要です。
 気をつけなければならないのは,会議が少ないこと,短いことに違和感をおぼえるときです。この場合,組織がコミュニケーション不足に陥っていて,放任主義や事なかれ主義といった悪しき風潮にむしばまれている可能性があります。こういうときは,多少本末転倒になりますが,「顔を合わせるための会議」を開催してみることも排除すべきではないでしょう。

 ・重要なのは,会議の頻度や時間の長短ではない
 ・そのときの必要性に応じた会議運営で,効率性を高める

【 設問2 】
 例えば会議の開始が5分遅れた場合,その損失を数値で表すとどうなるでしょうか。
 「5分×その会議の参加者数」分の時間的ロスが生じていることは当然ですが,会社にとっての損失は,その時間分の労務費が生じていることにとどまらず,「その時間があればできたであろう生産活動のロス」(機会損失)になることにも気づかなければなりません。
 また,こうしたロスが積もり積もって会社の業績を圧迫すれば,従業員の賞与の減額などにも跳ね返ってくるのです。
 これらのことから考えると,会議が定刻にはじめられるように努めることは,参加者が守るべき最低限のルールといえます。そして,このことを個々の従業員が自覚することが重要です。
 さらに,開始時刻の5分前には着席しておく,欠席のときだけではなく遅刻の際にも必ず事前に連絡するといった心がけも必要であり,こうしたことを徹底させることはリーダーの責務です。

 ・ムダな時間は,労務費の垂れ流しだけではない
 ・その時間に得られたかもしれない生産活動をも失うことになる
 ・さらに,会社の利益が下がることは,従業員の労働条件にも反映される

【 設問3 】
 X社は,定例会議では資料を席上配付し,月次会議では前日に配付しています。
 「今週の業務予定や課題など全員で共有すべき事項」が主要議題である定例会議については,席上配付でも何ら問題ないと思います。しかし,それ以外の会議について,もしも席上配付されたら,どういうことが起こりえるでしょう。
 参加者は,最初に重要と思われるところにざっと目を通すでしょう。枚数が多くて,全体に目が行き届かない場合は,発言者の説明を聞きながら,資料を目で追いかけるかもしれません。
 席上配付の場合,参加者にできることはこれくらいしかないでしょう。しかし,説明や意見のやり取りを聞きながら資料を読んでいると,重要なポイントを聞き逃してしまう可能性があります。また,その場であなたの意見を求められたとしたら,まともな答えを返せるでしょうか。
 やはり,こうした会議では,資料は事前に配付しておく必要があります。席上配付では,参加者が読む時間は「そのとき」しかありませんが,事前配付なら,各自可能な時間に読むことができます。事前に読んでおくことを徹底しておけば,実際の会議では詳細な説明を省略して,すぐに質問や討議に入ることもできます。
 参加者の側も,あらかじめ会議の目的をよく理解し,資料をよく読み込んで,疑問点や自分の意見をある程度準備しておく姿勢が大切です。

 ・資料は事前に配付する
 ・参加者は資料をよく読み込んで,意見や質問の準備をしておく

【 設問4 】
 会議の参加者をどのように決めるかについては,いろいろな考え方がありますが,結論からいえば,なるべく少数にすべきです。
 B君は,月例会議でほかの部の資料を見たり,話を聞いたりするのは勉強になると話しています。その会議が社員教育や能力開発を目的としたものであるなら別ですが,何かを決定するための会議では,その目的に一番適した運営方法が望まれます。
 会議の効率性の観点から参加者を見直した結果,これまで招集されていたのに突然呼ばれなくなった人は,「どうして呼ばれなくなったのだろう?」ということになるかもしれません。そうした場合は,納得を得られるよう誠意をもって趣旨を説明することが必要です。また,参加しなかった関係者に対しては,参加した人から会議の内容の周知徹底を図ることが重要です。

 ・会議の参加者はできるだけ絞り込む
 ・会議に参加しなかった関係者には,参加した人から伝達する

【 設問5 】
 設問1で,労使の団体交渉について触れましたが,結論に至るまで議論を戦わせなければならない場合であっても,1回ごとの会合には終了時刻を設定することが会議のスピードアップにつながるという点で望ましいといえます。
 会議の主催者は,会議の目的や過去の経緯に照らして,適正な会議の時間を設定し,これを厳守するよう心がけるべきです。
 これに対し,決められた時刻を過ぎて会議が続いた場合,次のような弊害が生じることが考えられます。
 ・会議が間延びすることで,その目的が見失われがちになる
 ・参加者の集中力が途切れて,建設的な意見が出なくなる
 ・参加者の会議参加へのモチベーションが低下し,次回から参加に抵抗感を持たれかね
  ない
 会議が長引くのは,その会議の目的に沿った発言をしていない,または微に入り細に入り長々と説明するなど,参加者側の意識に起因することもあります。したがって,事前に主催者から参加者に対し,終了時刻を厳守するよう自覚を促すことも必要です。

 ・1回ごとの会合に終了時刻を設定する
 ・主催者は適正な会議の時間を設定する
 ・終了時刻の厳守を促す

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