9.フロアの整理整頓と書類の共通化


フロアをよく見ると不要なモノだらけ

 経験上,組立系の工場ではモノの置き方によって,フロアに6割のムダが生じています。工場内に今必要な機械や工具以外のモノがどれだけあるか,今生産すべき1オーダー以外の在庫や仕掛がどれくらいあるかという観点で見ていくと,ムダなモノだらけで,今日使う分に限れば,必要なスペースは1/2から1/3程度ですみます。
 フロアは不要な設備や機械,治工具,仕掛,材料などに占拠され,死蔵品置き場となってムダな経費が計上されます。置き場になっているスペースもタダではなく,1uあたり年間1〜3万円の費用がかかっているのです。
 また1品あたりの1年間の管理費用は,どれくらいかかっているでしょうか。毎月の棚卸費用,データ関連のIT費用,スペース費用,場合によっては再検査費用や廃棄費用もあります。電気機器関係などでは1品あたり年間数万円,自動車関係の部品では数十万円といわれています。
 フロアから不要なモノを取り除き,必要なモノだけを配置すると,ミスの要因も減っ

て品質管理がしやすくなり,製造リードタイムが短縮することで納期も守られます。同じ人員で製造リードタイムが半減すれば,売上は2倍,利益は4倍以上になります。そのほか残業も減ることで,人件費や動力費などが大幅に削減されます。つまり,フロアの整理・整頓は,結果として生産性の向上とコストダウンにつながるのです。

余分なモノ,古い情報は廃棄

 整理・整頓するときは,人間の視覚の特性に合わせて,配置や表示のしかたを工夫する

ことが大切です。ここで簡単な演習をしてみましょう。左の図1を見てください。この中に○と▲はそれぞれいくつあるでしょうか。ひと目では数えられませんが,図2のように,形状や色などが同じものどうしでまとめて,さらに数字の表示標識をつけることで○は10個,▲は9個と一瞬で判別できます。
 このように関係の深いものを集めて,「まとまり感」を持たせるとモノは探しやすくなり,スペースにも空きが生まれてきます。作業の迷いやミスを減らすために,整理・整頓が非常に大切であることがわかるでしょう。

 整理・整頓の対象は,道具類だけではありません。工場の入り口から出口まで,製造プロセスの流れに沿って,帳票や書類,掲示板の注意書き,手順書,マニュアルなどを調べてみましょう。期限が切れている,今では誰も見ない,破れや汚れで読めない,無関係な場所にあるなど,無価値な情報の掲示物も数多く見つかるはずです。
 こうした不要な情報もすぐに撤去し,必要な情報と入れ替えなければなりません。放置された掲示物は誰も見ないので,見直しは3ヵ月ごとが目安になり,期限を過ぎたら撤去しましょう。新しい掲示物には,「発信者」「ファイル名」「発行日」「有効期限」などを記入しておくと,情報の責任者や有用性が明らかになり,質問があった場合も対応できます。
 また,帳票類を工程ごとに並べていくと,形式や記入方法がそれぞれ異なるケースが見かけられ,工程間での受け渡しや転記作業の際にミスの発生源となります。電子化し

て管理を一元化したり,帳票のフォーマットやサイズも共通化したりするのが理想的ですが,電子化や共通化ができない場合でも最重要の情報がひと目でわかるように修正する必要はあるでしょう。帳票類のように社内で定着しているものを変更するのは容易ではありません。しかし,すでに何らかのミスが発生し,混乱や損失を招いた経緯があるなら,上長などに提言すべき事案です。

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