6.聴衆を引きつける急所は話のスピードと声のリズム


「ゆっくりわかりやすく」一辺倒ではダメ

 「人前で話すときは,ゆっくりわかりやすく話しましょう」と言われます。しかし,これは必ずしも正解とは言い切れません。
 では,話すときのスピードはどの程度が適切なのでしょうか。
 ポイントは,あなたが聴衆からどう思われたいかによります。「ゆとり」「落ち着き」「信頼性」を感じてもらいたいのであれば,ゆっくり話すのが正解です。
 一方で,「頭の回転が早い」「若々しい」「情熱的」「スピード感」「臨場感」といった印象を持たせたいのなら,テンポよく話すのが正解となります。つまり,スピーチやプレゼンテーションの状況によって使い分けるということです。
 話すスピードは,聴衆の属性よっても変化させます。比較的年齢が高めの層に話をするのであれば,ゆっくり話すことをおすすめします。逆に,比較的年齢が低めの層に話をするのであれば,テンポよく話すと興味を引きつけます。昨今のユーチューブやコロナ渦の影響もあるのでしょう。10代20代を中心に多くの人が娯楽動画や授業・研修動画を見ることに慣れており,時間節約のために1.2倍速あるいは倍速スピードで動画を視聴しています。ですから,通常の速さで話をしていても,そのような人たちにとっては「遅い」とストレスを感じさせてしまうのです。

 ただし,こうした使い分けはあくまで目安として考えてください。意識しすぎると不自然な話し方になってしまいます。基本的には自分にとって自然に話ができるスピードでかまいませんが,慣れてきたら話のテンポを変える工夫もしてみましょう。
 その場合,注意が必要なのは早口の人です。実は,筆者も早口ですが,ゆっくり話をするときに意識しているのが,「間」です。「間」をつくることはあがり防止にもなりますが,うまく話をするうえでも欠かせないテクニックです。ゆっくり話そうとするのではなく,普段より多めに「間」をつくることでスピードをコントロールすることができます。

声の抑揚で聴衆を引きつける

 淡々とした口調で話しつづけたり,原稿棒読みのような一本調子だったりするのでは,聴衆は飽きてしまうし眠気を誘うことにもなります。
 そこで,声のリズム,具体的には声の強弱や大小を使い分け,話にメリハリをつけることで,聴衆を引きつけることが重要です。中でもポイントになるのが,言葉の第一音です。
 たとえば,言葉の強弱でメリハリをつけたい場合は,「おはようございます」の「お」,「こんにちは」の「こ」など,最初に発する音を大事にします。「お」や「こ」を強く発音することで,言葉に強い印象を与えることができるのです。こうした強い言葉といっしょに,身ぶり手ぶりを交えるようにすれば,その効果はさらに高まります。
 逆に,小さな声で話を始めるというやり方もあります。声が小さいので,聴衆は聞き取りにくいと感じます。すると,集中して聞かないといけない状況になるわけです。
 このように,聴衆を引きつけるテクニックとして,声に抑揚をつけることも覚えておきましょう。

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