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あなたの「負け」の経験が部下の自己肯定感を高める
私たちは,人生を勝ち負けで判断しがちです。そして,自分が負けると自信や自己肯定感を失う原因になります。具体的には「後輩が先に出世した」「同僚が先に資格試験に合格した」「プレゼンで競合他社に負けた」といったこと。こうした負けの経験で気分が落ち込んでいる人に,医師の私が「大丈夫ですよ」と励ましても心に響きません。本人が必要としているのは,実際に同じ経験をしている人の共感です。
たとえば,病気の患者会などで同じ苦しみを抱えている人からかけられる「大丈夫ですよ」という励ましの言葉は,医師の私の言葉よりも格段に重く,影響力があります。これを上司に当てはめると,自分の「負け」の経験が,負け意識で悩みを抱えている部下の自己肯定感を高めるきっかけになるのです。
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負けの経験を共有し,静かに話を聞くだけでいい
失敗続きで悩みを抱えている部下がSOSを発しているとき,上司のあなたができることは静かに話を聞くことだけです。これを専門的には「傾聴(深いレベルで相手を理解して気持ちを汲み取り,共感する聞き方)」といいます。
誰でも悩みごとを語り,不安や苦悩を吐き出すことで心の負担が軽くなります。相手の話を傾聴するときに,妙案や目の覚めるような解決策を述べる必要はありません。ただ自然に共感し,相手の気持ちを受け止めるだけでいいのです。重要なのは,同じように苦しんだ経験を持つ人のほうが,相手に寄り添って深く共感できるということです。
あなたが過去に経験した負けは,決して無駄ではありません。むしろ,くじけそうな周囲の人を支えるのに大きく役立ちます。
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自己肯定感が低いのは「思考のクセ」があるから
自信や自己肯定感を失っている部下には,共通の特徴があります。それは,仕事に取りかかるときに「思考のクセ」が足かせになっていることです。特に,負け意識の強い人は,まだ何もしていないのに失敗したときのことばかり心配しています。過去の失敗が心のしこりとなって頭に残っているのです。これは最近の失敗ばかりではなく,幼少期に両親から注意されたことが原因になっている場合もあります。
自己肯定感を高めるためには,思考のクセを自覚する必要があります。そのためには,メタ認知(17ページ参照)で自分を客観的に見つめることが有効です。第三者の視点で自分を見つめながら周囲の状況を俯瞰すれば,失敗を恐れる思考のクセを自覚できるでしょう。まずは,思考のクセがあることを部下に気づいてもらいましょう。
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思考のクセはそのままでOK,自分を客観的に見つめる
思考のクセに気づいたら,それを変えようとしなくても大丈夫です。メタ認知で重要なのは,ネガティブな気持ちになっているときほど,立ち止まって客観的に理解し,ありのままの自分を受け入れることです。そして,仕事に取りかかるときに不安に襲われたら,「自分はこんなふうに考えるクセがある」と思い出します。こうした経験を積み重ねることで,徐々に不安にとらわれることが少なくなります。失敗続きで自信を失っている部下がいたら,このようにアドバイスしてあげてください。
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