4.自社の基礎体力を高めるカイゼンの基本方針


カイゼン活動を推進する「KZ法」の概要

 多くの企業にとって,新規顧客の獲得や新製品の受注は最重要課題であり,それらをスムーズにすすめるためにもカイゼンが不可欠です。
 5S,品質・生産性向上,コストダウン,製品開発など,着手すべきカイゼンは数多くありますが,無理にカイゼンを実行して本来の業務に支障が生じているのであれば本末転倒であり,残念ながらカイゼンを中断せざるをえないケースも出てきます。しかし,カイゼンの中断と再開を繰り返しているようでは,なかなか事態は進展せず,カイゼン活動の必要性そのものが疑問視されてしまうでしょう。では,どうすれば数々のカイゼンを無理なく効果的に実行できるのか ―― その答えの1つが筆者の

提唱する「KZ法」です。
 KZ法は改善の頭文字の「K」,全社の「Z」を取ったカイゼンの方法です。「現場・現物と全社的カイゼンを結びつける経営者参加型改善技法」とも呼び,会社を個々の部門ごとの寄せ集めの組織から,全体の力を集約して相乗効果を生み出す組織へと変革させる手法です。以下の活動を同時にすすめることで,問題の共有,課題の克服,カイゼン力の成長を同時に促します。これらを経営者,他部門からの参加者,現場の担当者が一丸となって行うことで全体の流れを把握し,チームワークのもとでカイゼン活動を継続するというものです。


現場に集い,全員で課題を確認する

1.快適な現場づくり
 これは一般的な5S活動です。清潔で整理整頓された気持ちのよい職場こそ最も効率的に働ける職場であるだけでなく,社員のモチベーションを向上させます。
2.効率的な現場づくり
 参加者全員の協力で工程全体の流れを円滑にして生産性向上を実現します。動線の整備だけでなく,前後工程の連携強化も生産性の向上につながります。
3.ムダのない在庫管理
 この場合の在庫とは,製品在庫だけに限りません。原料や金型などの保管品も含めて「必要」「不要」「めったに使わない」に分類し,必要としないモノを取り除いてスペースをつくり,さらに不要なモノからキャッシュを生み出します。
4.部門間の責任転嫁の回避
 カイゼン活動を実行する際,個人や一部門では“わからない”“解決できない”問題も,全員参加によって答えが出るケースは多く,問題の責任転嫁が防げます。
5.部門間の連動性強化
 問題に気づいても,それを報告することで自分たちの仕事を増やし,余計な業務を抱え込んでしまう ―― この「かもしれない」という懸念を全員参加によって払拭し,カイゼンを推進します。
6.社長の役割と存在意義の確認
 社長の仕事は方向性を決めるだけではありません。従業員のカイゼン力を育成するには,カイゼンを指示するだけではなく,社長の承認と支援が大事な要素になります。社員のモチベーションを高めることも社長の大きな役割です。
7.自社でのカイゼン力,アイデア出しの向上
 コンサルタントのアドバイスで業績が伸びても,それで会社に実力がついたとはいえず,自社の力をつけることが重要です。また,従業員はもちろん,パートタイマーから優れたカイゼンのアイデアが生まれることもあります。

 これらすべてはカイゼンのゴールではなく,スタートです。そして,各部門が個別に行うのではなく,全社でまとめて実行する方法として考案したのが「KZ法」です。現場で課題を確認しながら,リーダーたちが独自に考えたカイゼンについて社長と直に意見交換ができれば,自分たちの目標が明確になり,自信を持って仕事に取り組めます。また,カイゼンのスピードが上がってきたら,社長に現場の視察をたびたび要請し,そのカイゼンのサイクルを回しつづけることが大切です。さらに,カイゼンの成果が認められてリーダーに任される権限が増えれば,リーダーの役割はより重要性を増し,活躍の場も広がるでしょう。

*5S:整理・整頓・清掃・清潔・しつけの頭文字をとった職場環境のカイゼン活動

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