ケーススタディ編では,SDGs達成や社会課題の解決を通じ,ビジネスを展開・発展させた実際の企業の事例をもとにしたストーリーをみていきましょう。まずは,社会課題解決を慈善事業として開始したことにより,結果的にビジネスの拡大にも成功した医療・衛生材料関連メーカーのケースです。
このメーカーは,事例に書かれていたように,貧困や衛生レベルに問題を抱えていた地域に自社製品を無償提供しています。それをきっかけに,地域の社会問題の緩和や市場の安定的成長に貢献し,ビジネスとしてもその恩恵を享受することになったのです。具体的には,地域における自社のブランドイメージ向上により,顧客からの支持,行政や地域社会からの支援を拡大させることに成功しました。また,支援を受けた人のなかには工場に就職する人が出てくることなども見込めそうで,人財確保にも効果があったといえます。よって,選択肢@〜Bはいずれも正しく,Cが正解となります。
企業が社会課題の解決に貢献しようとする際,単なる寄付といった慈善事業を行うだけではなく,自社の事業を通じた貢献を検討すべき,という考え方が昨今主流になってきています。社会の持続性を高めるには,それを支える事業の持続性も確保しなければなりませんから,この考え方は正しいといえるでしょう。ただし,必ずしも社会貢献と事業の成果を同じタイミング・場所で実現できるとは限らないことには留意が必要です。
このケースのように,発端は慈善事業であっても,現地の課題に正面から向き合い,採算を度外視してその解決に貢献した結果,ビジネス拡大につながっていくケースもあります。時間軸の違いだけでなく,場所の違い,例えば,原材料供給を担う課題の解決に貢献したら,主要な市場でのビジネスの成功につながった,ということもありうるでしょう。SDGs貢献と自社のメリットの両立を実現するためには,そこに至る道筋・ストーリーを十分に検討する必要があるといえます。
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