SDGs達成に向けた企業への期待
近年,気候変動や資源の枯渇などの環境問題,貧困・強制労働などの人権問題が大きく取りざたされています。また,新型コロナウィルスの世界的流行により,安全衛生の確保の重要性を浮き彫りにしました。これ以外にも社会は数多くの課題を抱えており,将来世代が豊かに暮らせるようにするためには,SDGsのような取り組みを進め,社会の持続可能性を高めていく必要があります。
SDGsの登場以前にも,よりよい世界を目指す国際的な取り組みは存在していましたが,どちらかというと国際機関や政府が活動の主体でした。一方,SDGsでは,企業や市民などのあらゆる主体が参画し,それぞれの役割を果たすことが求められるようになりました。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のパラグラフ67では,企業(民間セクター)に対し,「持続可能な開発における課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを求める」と言及されています。
今日,世界的な大企業の売上規模は,多くの国家の国家予算を上回るほどになっています。例えば,2020年のウォルマート(アメリカ)の売上高は,世界第1位の5,239億6,400万ドルで,オーストラリアの2017年の国家予算(4,900億ドル,世界第10位)を上回る規模です。社会課題の解決に向け,企業の力に期待するのは,必然の成り行きであるといえるでしょう。
企業側から見たSDGs貢献の必要性と意義
一方,企業にとっては,こうした社会課題の解決に寄与するための取り組みは,慈善活動,あるいは社会的批判を回避するための手段として捉えられることが主流でした。企業の本業とは異なる,いわば余力の部分で実施するものとされてきたのです。 しかし近年,SDGsの普及や人権問題,気候変動問題への世界的な注目の高まりを契機に,企業活動に対する要求が加速度的に高まっています。インターネットやSNSの普及により,社会に負の影響を及ぼす企業は,すぐに世間の知るところとなり,大きな批判にさらされるようになってきました。ひとたびこうした事態が生じれば,取引の喪失,ブランドの毀損,人財の流出など,企業にとって深刻な影響が発生します。企業経営において社会への悪影響をないがしろにすることのリスクが,従来とは比較にならないほど大きくなってきているのです。
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