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企業活動の効率化と環境負荷の低下が期待できる
企業がサステナビリティを強化していくために,デジタル技術の活用はもはや不可避です。特に近年,サステナビリティと並んでよく聞かれる言葉の1つに,デジタル・トランスフォーメーション(DX)があります。経済産業省が2019年に発表した「『DX推進指標』とそのガイダンス」によれば,DXは次のように定義されています。
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企業がビジネス環境の激しい変化に対応し,データとデジタル技術を活用して,顧客や社会のニーズを基に製品やサービス,ビジネスモデルを変革するとともに,業務そのものや組織,プロセス,企業文化・風土を変革し,競争上の優位性を確立すること。
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そして,サステナビリティの領域においても,デジタル技術を用いた変革の動きが生まれてきています。ここでは,デジタル技術の活用によるサステナビリティ面での効果について,2つの観点から見ていきましょう。
ビジネスにおけるデジタル技術活用の効果として大きいのは,やはり業務の効率化であると考えられます。例えば,工場の生産現場において,設備の稼働状況や生産ラインの情報を可視化することで生産効率を上げたり,物流において,AIを活用して効率的な輸送ルートを割り出したりするといった具合です。
こうしたケースの多くで,資源投入量やエネルギー利用の削減がもたらされます。資源の節約は,自然環境の保護や循環経済の実現にとって必要不可欠です。また,エネルギーの利用量が減少すれば,温室効果ガスの排出削減も期待できます。デジタル化によって企業活動を効率化した結果,その分,環境負荷も低下する可能性があるという点で,デジタルとサステナビリティは相性のよい考え方だといえます。
ブロックチェーン技術を用いたサプライチェーン管理
サステナビリティと密接に関連するデジタル技術として,「ブロックチェーン技術」も見逃せません。ブロックチェーンは,もともと仮想通貨(暗号資産)の仕組みを構築するために発達した技術です。1つの端末ではなく複数の端末で情報を保有
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し,整合性を相互チェックすることで,データの改ざんを極めて困難にするという特性をもっています。
サステナビリティの文脈においては,このブロックチェーン技術により,原材料のトレーサビリティ(追跡可能性)を向上させることが期待されています。原材料の生産・流通の過程をデジタル記録し,ブロックチェーン技術によりその信頼性を担保することで,購入者は出自のはっきりした製品を選択できるようになります。また,追跡可能性が高まることで,企業としても人権・環境などの面で問題がないサプライチェーンを辿ってきた製品であることを証明しやすくなるのです。
例えば,自動車メーカーのフォルクスワーゲンは,コバルトの調達において,問題がないことを証明するために,このようなブロックチェーンの仕組みを活用しています。コバルトは,電気自動車のバッテリー製造に必要な原料ですが,人々の暮らしを脅かす武装集団の資金源となりうる,いわゆる「紛争鉱物」としても知られています。また,児童労働など,人権問題の温床となる可能性も否めません。
そこでフォルクスワーゲンは,自社が利用するコバルトが,どのような鉱山で採掘され,加工されてきたか,という情報を,ブロックチェーンを用いて改ざん不可能な形でデジタル記録する取り組みを開始しました。
厳密には,ここに記録されているサプライチェーンの各企業が,人権・環境対応においてクリーンであることを,第三者証明などを用いて証明する必要はあります。しかし,ブロックチェーンが,同社のサプライチェーンに問題がないことを担保するうえで,極めて重要なツールになることは間違いありません。
このように,デジタル技術は企業活動の可視化や信頼性の向上にも寄与する可能性があり,それはサステナビリティの進展を促すものであるといえるでしょう。
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