10.業務プロセスを全体最適化するDX 全社のシステムとデータベースを一元化

 顧客を待たせないサービスの実現に向けて

 人々の消費意識が「モノからコトへ」と転換する中,企業は,ユーザーの顧客体験(CX)をいかに高めるかということに頭を悩ませるようになっています。
 たとえば,製品の使い方に関する問い合わせや,修理の注文などを受けたとき,いかにスピーディーに対応できるか,ということは消費者の企業やブランドに対する信頼度に大きく影響します。製品を売って終わりではなく,その後もどれだけ懇切丁寧にサポートし,満足のいくサービスを継続的に提供できるか,ということが重要になっているのです。
 ところが,実際にはカスタマーサポートセンターなどの対応窓口がお客さまから問い合わせやリクエストなどを受けても,それを処理する部門にしっかりとバトンタッチされず,対応が遅れたり,放置されたりしてしまうことがあります。これでは,サービスに対する信頼は損なわれ,お客さまは離れていってしまいます。
 では,なぜこうした問題が起こるのでしょうか。それは,窓口のシステム・データベースと,オーダーを処理する部門のシステム・データベースが“分断”しているからです。日本企業の多くは,業務に使用するシステムやデータベースを,それぞれの部門が,それぞれの業務に使いやすいように開発してきました。
 その結果,部門ごとに業務の部分最適化はすすんだものの,システムやデータベースは部門ごとに“サイロ化(縦割り化)”し,相互接続できない状態になっているケースが多いのです。
 システムやデータベースがつながっていれば,カスタマーサポートセンターが入力したお客さまの問い合わせやリクエストの内容は,すぐさま対応する部門のデータベースにも反映され,それをもとにリクエストに応える作業が行えます。
 しかし,つながっていなければ,カスタマーサポートセンターは電話やメールで担当部門とやり取りするしかなく,手間がかかるだけでなく,連絡が取れるまで時間を浪費することになってしまいます。場合によっては連絡が途切れ,お客さまからのリクエストを放置してしまうという最悪の結果を招きかねません。

 サイロ化した各部門の情報を共有できる

 こうした課題を解決するためには,“サイロ化”した全社のシステムやデータベースを,すべて一元化する必要があります。しかし,事業規模が大きければ大きいほど,すべてを一気に整備し直すというのは困難な作業となります。場合によっては数

年がかりとなり,投資額も膨大になるかもしれません。
 そこで最近,注目を集めているのが,既存のシステムやデータベースはそのまま利用し,そのすべての情報を統合するデジタルプラットフォームです。
 米国のIT企業が開発したもので,日

本でも大手通信会社や製造業などが相次いで採用したことから,導入する企業が増えています。
 このデジタルプラットフォームの特徴は,すべてのシステムやデータベースをいちからつくり直さなくても,サイロ化された部門ごとの情報を全社で共有し,デジタルワークフローと呼ばれる業務プロセス自動化の仕組みによって回せるようになることです。たとえば,カスタマーサポートセンターがお客さまからリクエストを受けると,その情報はすぐさま担当する部門のデータベースにも反映され,同時に「何を,いつまでにやる」というリクエストが部門の担当者に入ります。
 担当者がリクエストに応じて作業を完了し,その報告を入力すると,カスタマーサポートセンターのデータベースにも反映され,お客さまには完了のお知らせができるという仕組みです。これなら,電話やメールでやり取りする手間と不正確さを解消できますし,「誰が,何を,どこまでやったのか」という進捗状況も可視化します。お客さまから「以前,頼んだことはどうなっているのか」という催促の問い合わせを受けても,誠実に対応できるようになるわけです。
 社内で稼働しているシステムやデータベースの数があまりにも多く,業務プロセス効率化の障害になっている企業は,導入を検討する価値があるでしょう。

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