2.営業のDX 営業全体の効率アップで売上と利益を伸ばす

 トップセールスパーソンのノウハウを共有できる

 人手不足がすすむ中,営業担当者1人ひとりにかかる業務負荷も大きくなっています。売上や利益に直接結びつかない業務はなるべく減らし,お客さまと接する時間を
5分,10分でも増やしたいと考えている営業担当者も少なくないでしょう。
 そうした営業担当者の省力化や,営業活動そのものの効率化に結びつくのがSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)です。
 営業担当者は,外回りの業務が終わった後,日報や週報,訪問先ごとの営業進捗状況に関する報告書などを作成しなければなりません。これらは活動の振り返りや,次なるアプローチを考えるために欠かせない業務ですが,手書きの作業は時間がかかり,報告書がいくつもあると,同じ内容を何度も書く無駄が生じます。
 SFAなら,パソコンにデータを入力すれば,その内容をもとにさまざまな報告書を自動作成してくれます。しかも,蓄積されたデータの分析をもとに,次のアクションや訪問先を指示してくれる機能も備わるので,個々の営業担当者だけでなく,会社全体としての営業活動を効率化できるのがSFAの大きなメリットです。
 各営業担当者が入力したデータは,会社全体のデータベースとして蓄積され,同じ顧客に対して,誰が,どのようにアプローチし,どんな成果が得られたのかといった情報を共有できます。その結果,チームとしての動きに無駄がなくなり,営業担当者どうしの連携や引き継ぎもしやすくなるわけです。
 また,特定の担当者が営業活動で大きな成果を上げた場合,その訪問先やアプローチの仕方といった情報も共有できるので,トップセールスパーソンの経験やノウハウを社内に普及させることにも役立ちます。これによって会社全体の営業力が底上げされれば,ますます売上アップや利益の拡大に結びつく可能性があります。

 タイムリーなアフターサービスで顧客体験を高める

 SFAには,CRM(顧客関係管理システム)が含まれるか,連携されるようになっているのが一般的です。CRMとは,会社名や部署名,担当者名といった顧客デー

 タベース情報だけでなく,購入した製品・サービス,購入数量や金額,購入頻度,次に購入を検討している製品・サービスなど,営業活動に必要な情報を網羅的に蓄積できるシステムです。
 これらの情報を社内で共有・分析することによって,複数の営業部門やチームが連携しながら,迅速なアプローチや適切なフォローアップが可能になります。
 また,CRMには営業活動のための情報だけでなく,すでに顧客が製品・サービスを購入して何年が経過しているか,どの程度満足しているか,といったアフターサービスやメンテナンスのための情報も蓄積できます。購入後もタイムリーなアフターサービスを提供することで,継続的に顧客体験(CX)を高めることができるわけです。
 顧客からの問い合わせやクレームの内容,その対応の仕方などの履歴も記録することで,個別最適な対応を図れるようになります。さらに,納入した製品・サービスの買い替え時期が迫ったら,タイミングを逃すことなく次の営業をかけることができるのも大きなメリットでしょう。
 このように,SFAやCRMは営業効率を高め,売上と利益を伸ばすための有効なシステムですが,ただ導入すれば効果が上がるというものではありません。たとえば,営業担当者が日々データを入力しなければ,どんなに素晴らしい“箱”が用意されても,効率化に役立つ情報は蓄積されず,宝の持ち腐れになってしまいます。データ蓄積と活用の重要性を各担当者にしっかり理解してもらい,毎回欠かさず入力することが大切です。SFAとCRMは,クラウドサービスなら1ユーザーあたり月額数千円程度から利用できるものもあります。

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