ファシリテーションについて考えるとき,「集団活動」というのが1つのポイントです。たとえば,たった1人で何かの活動をするのなら,ファシリテーションは必要ありません。また,複数人で一緒に活動する場合であっても,その活動内容にとても詳しい人(ボス)が1人いて,そのボスが活動のすすめ方やほかのメンバーがやることを決めて指示し,各メンバーはボスの指示に従って活動していくというのであれば,そこにファシリテーションはあまり必要ないかもしれません。
ファシリテーションが重要になってくるのは,複数人が一緒に何らかの活動をする場合で,その活動のすすめ方や各メンバーの役割について,1人のボスが決めるのではなく,参加メンバー全員で話し合って決めていくような場合です。
◆ ファシリテーションの重要性の高まり
日本は高度成長時代,欧米諸国に追いつき追い越せをスローガンに,人々は同じような価値観をもち,企業は大量生産を行っていました。このような時代であれば,数年先がどうなっているかはある程度予測ができ,その分野に経験豊富な1人のボスの言うことに従って集団活動をするほうが効率的であったといえます。
一方,現在は変化の時代。ダイバーシティや働き方改革が叫ばれ,人々はさまざまな価値観をもち,企業にはイノベーションが求められています。将来の先行きは不透明で,過去の成功体験にもとづいた行動が必ずしも正しいとは限りません。このような時代には,1人のボスが集団活動の方向を決めるのではなく,多種多様な経験や価値観をもった複数の人たちで話し合いながら答えをみつけていくことが重要です。
その際,その集団活動がスムーズにすすむように,また成果があがるように舵取りをするのがファシリテーターの役割になります。そのため,さまざまな社会課題が複雑になっていく中,今後ますますファシリテーションの重要性が高まっていくと考えられます(図表2)。
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