2.若手が辞めていく職場にしないために


◆ リアリティショックによる離職

 「入社した人材が数ヵ月で辞めてしまう」は,なぜ起こるのでしょうか。ひとつは,「リアリティショック」が発生することがあげられます。リアリティショックとは,新たに職に就いた人材が,事前に思い描いていた仕事や職場環境のイメージと,実際に現場で経験したこととの違いを消化しきれず,不安や幻滅,喪失感などを強め,ときに離職にまでいたることを指します。
 では,どんなイメージでギャップが生じているのでしょうか。

 このデータによれば,「報酬・昇進」「達成感・やりがい」「働きやすさ」などの項目において,入社前のイメージと異なっていたという結果が出ています。ギャップが生じてしまう原因として,新しい仕事に期待を抱き過ぎているという部下側の問題と,現実を上手に伝えきれていない組織側・上司側の問題があるでしょう。これらを解決していくためには,お互いのコミュニケーションが取れており,仕事の不安の解消や,仕事を楽しめるようやりがいや成長実感を与えるための働きかけが必要となるでしょう。先のZ世代の調査では,「つまみ食い」というキーワードがあげられていました。選択肢の多い世の中で,ギャップを感じて失望をそのままにしてしまえば,退職の決意も早期になされるのは,当然といえるかもしれません。

◆ 退職をとどまった理由

 では,リアリティショックを感じながらも辞めなかった人は,どのような理由で会社にとどまることができたのでしょうか。
 エン・ジャパンの入社後活躍研究所の提言「なぜ,『若手優秀人材』は辞めるのか?」(https://corp.en-japan.com/success/19428.html)によると,踏みとどまった理由として次の3つがあげられました。

 【一度退職を考えたけれども踏みとどまった理由】
 ▶ 周りに相談できる人がいた
 ▶ 会社の姿勢・方針に共感した
 ▶ 働きがいがある

 記事によると,「周りに相談できる人がいた(人間関係のよさ)」に言及している人が多かったようです。このことは,離職防止に大きなヒントとなるでしょう。

◆ 人間関係の構築

 「風邪はひきはじめが肝心」と同じで,組織にはびこる病も早いうちに対処することが重要です。相談できる相手がいて,話したらスッキリして悩みが消えた経験がある人も多いでしょう。新入社員も同じです。リーダーが身近な存在となり,ざっくばらんに話を聞いてあげるだけで解決することも多いです。また,リーダーだけでなく,同期や同年代どうしの横のつながりも当然ながら重要です。同じ環境下にいる者どうしのコミュニケーションは,言いにくいことを言いやすく,ストレス発散に役立ちます。さらに,別の部署の管理職とのコミュニケーションは,日頃部署では言いにくい不満を出しやすく,ストレスが発散できます。筆者自身,悩んだときに別の部署の先輩に話を聞いてもらい,視点や視座の異なる意見やアドバイスを受けて,モチベーションを取り戻した経験があります。若い世代は,人間関係を上手に広げて多くの情報を得たいという気持ちが強いですから,なおさらその機会をつくって,狭い世界に閉じ込めるようなことをしないほうがよいでしょう。

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