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若手社員から見た会社と中高年の実像
●Case1 「ゆるブラック」を理由とした若手の離職
成長が感じられ,今後の活躍が期待できるようになってきた若手社員が会社を辞めてしまう。そんなケースをよく耳にします。マイナビ社による「2022年新入社員の意識調査」によると,現在の職場に働きがいを感じていない新入社員の約3割が「1年未満に退職意向」,さらに「3年以内に退職意向」は6割を超えていました。育成という投資をしてきて,これからやっとリターンのフェイズに切り替わるときに突然去られてしまうのは,直属の上司としても会社としても打撃が大きいものです。
若手人材の離職理由はさまざまですが,報酬や労働環境面のほかに転職先へ求めるものとして,1)自分が望む昇進やキャリアパス,2)新たな知識やスキル,実践経験が得られる成長機会,3)やりがい,やる気の源泉となる新たな挑戦機会,などがあげられます。労働環境は厳しくないが,やりがいや成長の感じられない職場を意味する「ゆるブラック」という新語がありますが,この「ゆるブラック」が若手の離職理由の1つになっているのです。
●Case2 「働かないおじさん」問題
全く働いていないわけではないものの,働きに見合わない高い報酬を受け取っている中高年の男性社員を指す新語が「働かないおじさん」で,10年ほど前から若手社員の間で批判的に使われています。若手社員からすれば,働く意欲を失ってしまった中高年人材が高給をもらいながら仕事をしていないのは不公平であり,彼らの存在が自分たちのチャンスや働く意欲をも奪っているように映るのです。
いずれのケースも,筆者が講師を務める研修前後の打ち合わせや研修参加者とのカウンセリング,コーチングを通じて実際によく聞くものです。Case1は,こと有能な人材に働きつづけてもらうには,人材から「働きたい」と思ってもらえる,選ばれる会社になる必要がある,といえるでしょう。Case2は,理由はどうあれ働く意欲を失ってしまった中高年人材の存在は企業の経営を圧迫するばかりでなく,若手人材のワークモチベ
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ーションに影響を与え,最悪の場合は若手人材が社外に流出してしまうこと(Case1)にもつながります。このようなことが,今,日本の企業で起こっているのです。
人材業界における旬のキーワード「キャリア自律」
実は,Case1とCase2に共通するものとして,「キャリア自律」というキーワードがあります。
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働く個人が自らのキャリアについて主体的に考え,自らのキャリアに責任を持 ち,自らキャリア形成に取り組むこと,またはその状態。 |
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少し前までは,キャリア研修などの実施にあたっては,人事担当者から「あくまでも自社内でのキャリアを考える内容にしてほしい」という要望が多かったのですが,最近は「より広い視野で自分のキャリアに向き合ってほしい」という声が増えています。先見性のある企業では,さまざまな教育や施策が「会社は個人に向き合い,個人は自分のキャリアや人生に向き合う」というスタンスで行われていることを肌感覚で感じています。
働かないおじさんを生み出してしまった背景として,終身雇用と年功序列が考えられますが,トヨタ元社長の発言にもあるように,終身雇用を維持するのが難しい時代へと変わり,企業はもはや従業員個々のキャリアを預かることはできなくなっています。従業員個々に委ねる,すなわち「キャリア自律」を促す方向に舵を切る新しい時代へと突入しつつあるのです。
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