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モチベーションと行動の関係性
一般に「意欲・やる気・士気」,あるいは「動機付け」と解釈されているモチベーションについて,経営学者の入山章栄氏は以下のように説明しています。
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モチベーションは,人を特定の行動に向かわせ,そこに熱意を持たせ,持続させる。
モチベーションは,人の行動に影響を与える。それは3つの要素に分かれる。
@ 行動の方向性 A 行動の程度(活力・規模) B 行動の持続性
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●モチベーションの種類
1)外発的動機:報酬・昇給など,「外部」からの影響で高まるモチベーション
2)内発的動機:外部からの影響なしに,純粋に「楽しみたい」「やりたい」といった, 内面から湧き上がるモチベーション
※これまでの実証研究で,外発的動機よりも内発的動機のほうが,個人の行動へのコミットメントや 持続性を高めることが研究者の間でコンセンサスとなっている。
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参考:『世界標準の経営理論』(入山章栄著 ダイヤモンド社)の「第19章 モチベーションの理論」をもとに筆者が編集 |
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では,スポーツ選手の事例をあげて,モチベーションについて考えてみます。
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2人の選手は,念願だった決勝進出を果たし,試合当日まで残り1ヵ月を切りました。
A選手は,試合当日に向けて練習時間を増やし,これまでよりも激しいトレーニングを始めました。ときには自らを鼓舞するように大きな掛け声を出しながら,毎日練習を重ねました。試合の1週間前になると疲れも出て少し気分が下降ぎみだったので,景気づけに夕食は大盛りのかつ丼をとりました。試合当日,A選手はC監督から次のように声を掛けられて試合会場へ向かいました。「優勝したら,一躍有名人だぞ!」
B選手は,試合当日に向けて練習時間を減らし,相手選手の研究に時間をあてました。ときには激しいトレーニングも取り入れましたが,主に1つひとつの動作を細かく確認する練習に重点を置きました。試合の1週間前になると,小学生のときに書いた「夢は決勝の舞台に立つこと」という作文をふと思い出し,読み返しました。試合当日,B選手はC監督から次のように声を掛けられて試合会場へ向かいました。「君の夢が叶ったね!」
2人の選手は,それぞれの決勝戦で見事に勝利し,優勝を果たしました。
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みなさんはこの2人の選手のエピソードをどのように捉えたでしょうか。モチベーションの3つの要素に照らし合わせて考えてみてください。
@ 行動の方向性 A 行動の程度(活力・規模) B 行動の持続性
一見すると,すべての要素でA選手のモチベーションが高かったように思えます。しかし,B選手のモチベーションが低かったのかといえば,そうではありません。
オリンピック選手をはじめ,数多くのスポーツ選手やチームをサポートしているスポーツメンタルコーチの柘植陽一郎氏は,下図に示したように,モチベーションに影響を与える要素とその特徴について述べています。これはスポーツ選手を対象としたものですが,一般の人にも当てはまります。
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参考:『成長のための答えは,選手の中にある』(柘植陽一郎著 洋泉社)の図解・記述を参考に筆者が作図 |
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モチベーションに影響する要素はいくつかあり,それぞれ爆発力と持続力に違いがあります。「テンション」を高めると意欲・やる気・士気は急速に高まりますが,長続きしません。一方,「自分軸」がもたらす意欲・やる気・士気は,テンションほど瞬間的に高まりにくいものの,長期間,高いレベルを維持することができます。「自己効力感」は,ほかの2つの要素と比較して中間にあります。
上図に照らし合わせると,A選手のモチベーションに影響を与えた要素は上図の概ね左寄り,B選手のモチベーションに影響を与えた要素は上図の概ね右寄りに位置付けられます。これを見てもわかるように,モチベーションの高まり方,モチベーションを高める要素やそのアプローチも,人によってそれぞれ異なるのです。
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