ここで,クラウド見積システム利用料は5ユーザーあたり月額10万円だったとします。あなたが経営者だとして,このシステムを導入するでしょうか。果たしてこのシステムが高いのか安いのか,自社にとって導入する価値のあるものなのか,直感的には判断がつかないでしょう。
◆ 改善案を実現に結びつける効果試算
そこで,改善にかかるコストと,改善によって削減できるコストや追加が見込める利益を計算して,改善効果を試算します。以下の情報をもとに計算してみましょう。
@ クラウド見積システム利用料:月額10万円/5ユーザー
A 営業員の人数:20名
B 営業事務員の人数:10名
C 営業課長の人数:4名
D 営業員のモデル人件費:600万円/年
E 営業事務員のモデル人件費:400万円/年
F 営業員1人1日あたりの見積件数:2件
G 年間営業日230日
H 1日の労働時間8時間
まず,システム導入で1年間に削減できるコストを試算しましょう。導入により,図表2の業務フローで#3と#4の作業がなくなります。営業員全体の年間見積件数は
A20人 × F2件 × G230日 = 9,200件……a
なので,旧業務フローの#3と#4にかかる時間は
#3見積書作成:0.5h × (a) 9,200件 = 4,600h……b
#4見積書確認・承認依頼:0.2h × (a) 9,200件 = 1,840h……c
営業員・営業事務員の1時間あたりの人件費は,以下のとおりです。
営業員:D600万円 ÷ G230日 ÷ H8時間 ≒ 3,261円……d
営業事務員:E400万円 ÷ 230日 ÷ H8時間 ≒ 2,174円……e
よって,単純計算で,営業事務員,営業員の人件費は
(b) 4,600h × (e) 2,174円 ≒ 1,000万円
(c) 1,840h × (d) 3,261円 ≒ 600万円
合計1,600万円(f)が削減できるということになります。
次に,システム利用料の総額を求めましょう。ライセンスは5人単位なので,A〜Cの合計が34名であることを踏まえると,7ライセンス必要になります。
@10万円 × 7ライセンス × 12ヵ月 = 840万円(g)
削減コストと追加コストの差額を計算すると
(f)削減コスト1,600万円 − (g)追加コスト840万円 = 760万円
のコスト削減が実現します。作業が減ったからといって即座に人員削減をすることはできませんが,捻出した時間は別の付加価値を創出する活動にあてることができるようになるでしょう。
◆ 改善を推進し仕組みを研ぎ澄ますには
こうやって具体的に数値を当てはめて試算することで,業務改善の効果を定量的に示せるようになり,業務改善を実行に移すか否か,経営判断ができるようになります。試算結果で「より儲かる仕組み」を構築できることが裏付けられれば,業務改善を一歩前に進めることができるでしょう。
|