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上 司:昨日の打合せの議事録,早めにつくっておいてくれ。
部 下:はい,わかりました。できるだけ早くつくります。
(その日の夕方)
上 司:今朝頼んだ議事録はもうできた?
部 下:まだです。明日の午前中までほかの仕事がありますので,その後に作成し ます。
上 司:明日の朝に役員へ説明しなくてはならないんだ。それでは間に合わん! (怒)
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さて,上司と部下のどちらに落ち度があったのでしょうか。どちらか一方ではありませんね。両方とも自分の考えをはっきりと伝えたつもりでしたが,相手が理解しているかを確かめませんでした。
◆ 相手は自分の言いたいことを理解しない
ビジネスシーンにおいてもプライベートにおいてもコミュニケーションの場ではこのことを前提にしておかなければなりません。話し合いのシーンでは,発信者Aと受信者Bは互いに生まれも育ちも違えば知識や経験,価値観も異なります。ですから,仮に同じ言葉,たとえば「果物」といってもAさんがリンゴのことを想像していてもBさんはミカンのことを想像することなどは当たり前なのです。
◆ 人は4つの耳をもつともいわれる
コミュニケーションの場での勘違いを表す言い方で「人は4つの耳をもつ」というたとえがあります。
これは,たとえば次のような場面です。
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夫:今日のおかずのステーキは久しぶりだったね。おいしかったよ。
妻:(あなたの稼ぎが悪いから,たまにしか出せないのよ) (1つ目の耳)
妻:(本当は口に合わないのにお世辞を言っているんじゃないの?)(2つ目の耳)
妻:(たまにしか出せなくて申し訳ないけど…) (3つ目の耳)
妻:(毎日ステーキを出してくれないと困るっていうこと?) (4つ目の耳)
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夫の発言を批判的にとらえる場合と肯定的にとらえる場合とで,このような違いが出てきます。こう考えると,互いの考えを一致させることなどできるわけがないという思いがつのってきます。
◆ 受発信の繰り返しがポイント
これまで見てきたように,発言したほうの想いが相手に正確に伝わることはないと考えておいたほうがよさそうです。そして,相手がどう思うかを予測することなどできないので,基本は言葉不足にならないように何度もたずね,聞き返すことです。
いわばコミュニケーションとは双方向の受発信の繰り返しであるともいえます。
このことを踏まえて,冒頭の上司と部下がどのような会話をすべきだったか考えてみましょう。
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上 司:昨日の打合せの議事録,早めにつくっておいてくれ。
部 下:はい,わかりました。いつまでにつくればよろしいですか。
上 司:明日の朝に役員会議があり,そこで説明するので今日中にほしい,できれば 早い時間帯に。
部 下:わかりました。ただ,明日の午前中までに仕上げないといけない仕事があり ますので,先に議事録をつくります。そうすると,明日午前中の締切が間に 合わなくなりそうですが…。
上 司:それはどんな資料なの?
部 下:(資料の目的について説明)
(その日の夕方)
上 司:今朝頼んだ議事録はもうできたか?
部 下:はい,できています。それから,今朝アドバイスいただいた方法で資料作成 したところ,その資料も今日中に完成しそうです。ありがとうございまし た。
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◆ 人間関係のくずれは「相手はこう思うはずだ」という思い込み
いかがでしょうか。上司も部下も何度も言葉を交わし事情を説明して,最適な解を得ることができました。この例だけでなく,人間関係がくずれる原因は「こういえば相手はこのように理解してくれるはずだ」という思い込みが原因ではないでしょうか。思い込みを排除して,こちらの想いを正確に理解しているか,たずねる手間を惜しんではなりません。
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