No.15.『限りある時間の使い方』 オリバー・バークマン

 死に際に「もっと働けばよかった」と後悔する人はいない

 洋の東西を問わず,ビジネスパーソンは時間に追われるのが常です。現代は仕事の生産性を高める「ライフハック」が溢れかえっていますが,それらを駆使して時間を捻出しても,代わりに別の「やるべきこと」で埋まるだけです。結果的に,より大きなストレスに苛まれ,不安で空虚な気分になるかもしれません。
 平均寿命を生きたとしても,人生はわずか4000週間ほど。悔いなく生きたいものです。もちろん,時間の使い方に正解はありません。自分が納得できるライフプランを持ち,それに近づくように毎日を過ごせればいいのですが,少なくとも,死に際に「もっと働けばよかった」と悔やむ人はいないのです。

 本書は,自分にとって理想の時間とは何かを知ることで,有意義な時間の使い方を探求します。タイムマネジメントの本ではないため,読後にもっと多くのことが効率よくできるようになるわけではありません。むしろ「やらないこと」のリストが増えているはずです。自分の有限性を受け入れ,その中で有意義な人生を築くにはどうしたよいのか,考えるきっかけを与えてくれます。哲学,心理学,スピリチュアル思想を駆使して時間との対峙の仕方を教えてくれます。
 本書が広く読まれている背景として,コロナ禍の影響が大きいようです。日常が停止し,時間の感覚が壊れてしまった人は少なくありません。時の経過が速すぎるような,反対に延々と停滞しているような,奇妙な感覚を持つ人が増え,時間管理を根本から見直すようになったのです。時間という捉えどころのない概念に向き合おうとするとき,本書はその全体像をつかむための端緒を開き,本当は時間を何に使ったらよいかを自覚するようになります。それによって変化した働き方や生き方は,以前に比べてより意義深いものになるでしょう。

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