1.ビジネス文では最初に結論を述べるのが基本原則

文章術の基本原則だけ覚えておこう

 数あるビジネススキルの中でも最重要なのが「文章力」です。人事担当を対象にした「社員の文章力に関する意識調査(日本漢字能力検定協会が2020年実施)」でも,96.4%が「ビジネスに文章力は必要」と回答し,66.3%の企業で文章力が昇格や昇給に影響しています。企画書や報告書で必要とされるだけでなく,昨今は社内外のやり取りもメールやチャットが主流となり,文章力の重要性はさらに増しています。
 文章力といっても,ビジネスパーソンに求められているのは,技巧を凝らした表現力の豊かな名文ではなく,わかりやすい文章です。文章術の関連書を手に取ると,さまざまなノウハウが紹介されていますが,そうした細かいことは抜きにして,ともかく読んですぐにわかるビジネス文にするための基本原則だけを覚えてください。
 ビジネス文の基本さえつかめば,文章を書くのがつらい作業ではなくなり,書き慣れてくるにしたがって細かいノウハウも自然と身についてきます。

書きやすく,相手にストレスを与えない文章構成

 社内の管理職,取引先の窓口担当者は日々多くの書類やメールに目を通さねばならず,1つひとつを熟読している余裕がありません。相手は多忙であることを前提と

し,文書も最初に結論(要点・主張)を述べるようにします。話の要旨を伝えてから,その論拠をエビデンス(裏づけとなる証拠,根拠)とともに説明し,最後に類似例や今後の見通しなどを補足として加えます。報告書や提案書,企画書でも,このスタイルは有効です。
 このように重要度の高い順に書いていく文章構成を,一般に「逆三角形型」または「結論先行型」と呼びます。書き手が戸惑いやすいのは書き出しですが,このスタイルならすぐに書きはじめることができ,読み手も冒頭で結論を把握できるので,最後まで読みとおす必要がありません。読み手のストレス

になるのは,最後まで結論の見えないダラダラした長文ですが,逆三角形型にすれば文章を短縮する場合も補足情報や論拠の一部を削除すればすみます。
 逆三角形型で書き慣れてきたら,より説得力を高める文章構成として「PREP法」を使うとよいでしょう。PREP法では,最初に結論や要点を述べてから,次に結論に至った論拠,さらに具体例をあげて,最後にもう一度,結論を述べるという構成です。逆三角形型より文書は長くなりますが,具体例をあげて説明するのでわかりやすく,最後に結論を念押しすることで説得力が増します。文書のほかに,プレゼンテーションや商談といったビジネスコミュニケーションにも活用できます。

PREP法

 P(Point=結論):「結論は〜ということです」
 R(Reason=論拠):「その理由としては(なぜなら)……」
 E(Example=具体例):「具体的な例として……」
 P(Point=結論):「したがって,結論は〜です」


最低限覚えておきたいビジネス文のマナー

 ビジネス文を書くにあたって,次の基本ルールも押さえておいてください。
● 1つの文書には 1つの案件だけを書く
 1つのビジネス文に2つ以上の案件を書くのはルール違反です。1回で複数の判断を相手に強いることとなり,各案件の対象者に文書を配布する場合も人によっては無関係な案件が含まれるので混乱します。複数の案件がある場合は,文書ファイルを分ける,メールもタイトルを変えて別々に送るなど,1文書1案件が原則です。
● 「です,ます」調,「だ,である」調のどちらかで統一
 文末表現には「です,ます」調(敬体)「だ,である」調(常体)があります。「だ,である」調は引き締まった印象を与えるため,常体で書くことをすすめる日本語専門家が多いようです。しかし,ビジネス文の提出先は目上の相手が多いことから,より丁寧な表現の「です,ます」調をおすすめします。ただし,「です,ます」調で統一する場合も,箇条書き,カッコ内の注釈,表内の説明文は「だ,である」調です。
● A4サイズで横書きがビジネス文の基本フォーマット
 官公庁の文書は用紙がA4サイズに統一されており,国内企業もこれにならっています。また,ビジネス文は数字や英字が混ざる場合も多いので,横書きが基本です。

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