2.4つの行動スタイルを知り人間関係の構築に活かす

相手の行動傾向に合わせたコミュニケーション手法

 効果的なコミュニケーションを行うには,まず相手のことを理解して相手が受け止めやすい形で伝えていくことが求められます。その方法論として考案されたものが「パーソナルスタイル」です。人をいくつかのタイプに分けてコミュニケーションを変える手法は,以前より行われてきました。パーソナルスタイルは,行動心理学などの研究をもとに,「他者の快適な環境に適応させる」という前提に立ち,それぞれの環境下における各人の特徴的な行動傾向としてまとめたものです。
 パーソナルスタイルは,自己主張(主張する・傾聴する)と感情表出(表出度が高い・低い)という2つの評価軸を用いて4つの領域に分類し(図表参照),その特徴や典型的な行動傾向を検証したうえで,スタイルとして確立させたものです。
 スタイルはそれぞれ,ドライバー(行動型)エクスプレッサー(社交型)エミアブル(友好型)アナリティカル(理論型)と名付けられています。
 パーソナルスタイルは,人の特徴的な行動傾向(パターン)を表します。相手の言動をよく観察して,そのスタイルの行動を予測します。そして,相手に合わせたコミュニケーションをとることで,相手から協力を得て,よりよい人間関係を構築することができます。スタイルにはそれぞれの特徴があり,長所と短所を併せ持ちますが,優劣はありません。パーソナルスタイルは,その人にとって最も効率的に違和感なく,安心してとれる行動パターンなのです。

パーソナルスタイルの活用で職場のストレスが減る

 パーソナルスタイルを理解することで,メンバーが何を望んでいるのか,どのような環境でモチベーションが上がるのかが推測できます。その結果,相手に合わせたコミュニケーションがとれるようになり,ふだんの会話もスムーズになります。また,相手のスタイルに合わせて会話の方向性や提案内容を選択できるので,お互いに気持ちよく仕事に取り組めるようになるでしょう。
 ビジネスシーンに限らず,人間関係で悩む人は少なくありません。しかし,職場で

は苦手な人だからといって,避けたり拒絶したりすることは難しいでしょう。その場合でも,パーソナルスタイルを活用することで相手を理解し,信頼関係を築くきっかけになります。
 また,パーソナルスタイルをチームで活用した場合,チームのコミュニケーションの活性化や,メンバーの長所を伸ばし,短所を補えるという効果も期待できます。お互いに人間関係の余計な摩擦がなくなるので業務中のストレスも減り,働きやすい環境を実現しやすくなります。


パーソナルスタイル活用の注意点は「過信」

 パーソナルスタイルの活用は人間関係の向上に役立ちますが,過信しすぎてはいけません。「私は○○スタイルだから」とか,「この人は○○スタイルだから」と決めつけるのではなく,人は本来それぞれ違う個性を持ち,コミュニケーションのスタイルも100人いれば100通りあることが前提です。
 パーソナルスタイルでは4つのスタイルに分類していますが,同じスタイルでも人によって違いは当然あります。スタイルの特徴はあくまで一般的な行動傾向の例であり,絶対的なモデルではないことに注意しましょう。
 しかし,スタイルの過信にさえ注意すれば,パーソナルスタイルはさまざまな状況で活かせます。「人はそれぞれ違う」のですから,効果的なコミュニケーションのためには,相手に合わせたな対応が必要です。
 パーソナルスタイルを一通り理解すると,今までやりにくさを感じていた人のタイプ,避けるべき言動,効果的な言動などが予測できるため,それをふだんのコミュニケーションに適用することによって,自他ともに業務が円滑に運ぶようになります。その適用対象は,上司やメンバー,取引先と幅広く,スムーズなコミュニケーションを通じて社内外の問題解決,社員の能力開発,目標達成などにも大いに貢献してくれることでしょう。

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