8.誰もがリーダーシップを発揮する職場づくり

リーダーシップが発揮される2つの職場モデル

 リーダーの役割は,メンバーや組織を変化させること。リーダーシップとは,メンバーの意識に影響を与え,動機づけ,行動に変化をもたらすことです。リーダーシップの発揮のされ方には,大きく分けて2つのスタイルがあります。

 垂直型のリーダーシップ:特定の一人がリーダーシップをとるスタイル
 水平型のリーダーシップ:メンバー全員がリーダーシップをとるスタイル

 垂直型リーダーシップの職場は,リーダー個人の行動やスタイルが焦点となり,組織に強い影響を与えます。メンバーはリーダーのビジョンや指示を受けて,主体的・自律的にリーダーを支援することが求められます。
 一方,水平型リーダーシップの職場は,メンバーが相互に影響を与え合うスタイルで,職場全体の価値観や雰囲気が焦点となります。リーダーはメンバー個々とビジョンを共有し,かつメンバー相互に協力・貢献する関係をつくることが求められます。
 また,垂直型ではリーダーが先頭に立ってメンバーを引率し,水平型ではメンバーの後方に立ち,メンバーを後押しします。垂直型は従来型のリーダーシップとして,これまで長年にわたって定着しているリーダーシップスタイルですが,近年は水平型

のリーダーシップスタイルをとる職場に注目が寄せられています。どちらがよいということではなく,組織のリーダーであるならば,自分の職場の特徴や,自分を含めたメンバー一人ひとりの能力やスキル,持ち味,特技を熟知し,自分の職場に適したスタイルをつくっていくことが必要とされています。


信頼とリスペクトで成り立つリーダーシップ

 誰がリーダーシップをとるにしても,垂直型であれ水平型であれ,メンバー相互の信頼関係が必要です。さらにその前提条件として,メンバーが互いをリスペクト(尊敬)することが求められます。

 リスペクト:年齢や役割などにかかわらず礼節をもって接する態度
 信頼:相手の行動の善意に注目し,見返りを求めず信じること

 こうした相互尊敬・相互信頼の関係が組織に備わっていること,そして各メンバーが互いの知識や能力を補完し合い,協力的な態度を示すことによって,誰もがリーダーシップを発揮できる職場となるのです。


適材適所とリーダーシップ

 仕事で成果をあげるポイントは,上司が部下の適性や能力に応じて,それに見合った適材適所の仕事に割り当てることです。適材適所には,2つの捉え方があります。

 @ その人の業績・能力 ⇔ 仕事の難易度・重要度
 A その人の持ち味・強み・特技 ⇔ 仕事の要素・要所

 企業では,おおむね業績評価・能力の高さに応じて,仕事の難易度・重要度を当てはめます(@)。しかし,それが必ずしも適材適所であるとはかぎらず,成果をあげる最適な役割配置ともいいきれません。誰もがリーダーシップを発揮できる職場にするには,業績や能力評価だけではなく,その人固有の持ち味や強み,あるいは特技に

注目することが大切です。7ページで紹介したH君のランニングにまつわるエピソードも,Aの適材適所に該当します。H君は,これまで本人や周囲を苦しめていた計画や時間への特異な「こだわり」を,持ち味・強み・特技にし,それらが活かせる役割を担えるようになったのです。

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