6.部下の職務行動の何をどう評価するか【人事評価の手順】

 日常のマネジメント能力が問われる

 実際の人事評価の方式は多種多様ですが,多くの企業では成績評価(成果評価)とプロセス評価(能力評価+情意評価)を組み合わせた方式をとっています。このうち,成績評価は「目標」の「達成度」を評価する目標管理方式が多く,プロセス評価は職種や等級ごとに必要な能力要件などを設定した「考課表」(企業によって「パフォーマンス評価」など呼び方はさまざま)による場合がほとんどです。
 目標管理方式のすすめ方や評価の仕方は別の機会(本誌2021年2月号など参照)に譲りますが,ここでは「考課表」を使った場合のすすめ方を考えます。

 人事評価は以下の手順を踏んですすめます(図表11)。
 @ 職務行動を通じての事実の把握(評価の前提)……人事評価は,被評価者の
  人間性や価値観などをみるものではありません。日々の職務行動を通じて示され
  る行動の事実にもとづいて職務行動を評価することです。したがって,評価者に
  はきちんと被評価者の職務行動をとらえることのできる力量が必要です。ある意
  味で,管理者の日常のマネジメント能力が問われることになります。
 A 手順1:行動の選択……職務行動の中でどの行動を人事評価の対象として取
  り上げるかということの選択をします。人事評価(考課)では「行動の選択」と
  いっています。
 B 手順2:評価項目(要素)の選択……ある行動を評価対象として取り上げた
  場合,その行動をどの評価項目(要素)で評価するかの選択を行います。これを
  「評価項目(要素)の選択」といっています。
 C 手順3:評価段階の選択……選択した評価項目(要素)について,それぞれ
  定義された評価段階を選択します。これを「評価段階の選択」といっています。
  点数づけをすることですが,印象による評価をしないことが大事なポイントで
  す。

 日々の部下の行動がとらえられているか

 優れた管理者は部下の行動をきちんと把握しているものです。日常の部下の行動から,職務行動として有効なもの,無効なものを観察します。観察というと,堅苦しくなりますが,一般に,部下の行動を把握するときは,以下の視点をみていくといいでしょう。
 @ 能力の理解と行動の把握……部下が行うさまざまな仕事,企画立案,指示命
  令,実務遂行,顧客対応,後輩指導,報告・連絡・相談,面接などの機会を通じ
  て部下の行動を把握する
 A 意欲の理解と行動の把握……部下がどんな職務に興味・関心を持っているの
  か,どんな点に問題意識を持っているのか,優れている取り組み姿勢はどんなと
  ころか,どのように行動が変化したかなどをとらえ,部下の行動を把握する

 部下の職務行動はどんなときにわかるか

 また,部下の行動は次のような機会をとらえて把握することができます。
 @ 顧客や外部の人と接触したとき……顧客や外部の人との応対状況の観察によ
  り対人関係能力,交渉態度,責任感,問題意識等が把握できる
 A 部下と一緒に仕事をするとき……観察,直接指導,対話を通じて,ほとんど
  すべてにわたる知識,技能,意欲,能力を把握できる
 B 部下からの提案や意見を聞くとき……提案の内容,提案の仕方,説明の方法
  等により問題意識,企画力,分析力,仕事への意欲が把握できる
 C 職場の問題点を協議するとき……討議のすすめ方,提出資料,論理の展開な
  どで,問題意識,問題解決力,状況対応力,協調性,リーダーシップ,対人関係
  力,判断力,構想力などを把握できる

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