1.リーダーの“聴く力”がチームの成果に表れる

 メンバーの話は十分に聴けている?

 “聴き上手”かどうかを自己評価するのは難しいものですが,多くのリーダーは「自分は聴き上手だと思う」「メンバーの話は十分に聴けている」と言います。
 ・効率的な報・連・相を徹底しているから大丈夫
 ・必要な情報はミーティングで十分に得られるので問題ない
などと考えて,安心している人も少なくないでしょう。
 ところが,この報・連・相にしてもミーティングにしても,リーダーが聴き上手かそうでないかによって,共有できる情報の質と量に大きな差が生じます。

 報・連・相で本当に大事な情報を得られているか

 もしリーダーが聴き上手ではなく,常に忙しそうに振る舞い,“話しかけるな!オーラ”を出していたとしたら……。普通にできる報・連・相すら,メンバーはためらうかもしれません。「悪い報告ほど早く」という鉄則も守られず,「迷ったらすぐに相談」する積極性もなくなることでしょう。
 効率的な報・連・相というのは,聴き上手なリーダーがいてはじめて成り立つものです。適切なタイミングで的確な報・連・相がされていれば(本来それが当たり前ですが),報・連・相の質も頻度も上がります。「こっちは忙しいのに,頻度が増えたら困る」という声も聞こえてきそうですが,質の高い情報を多く得られることのメリットのほうが大きいに決まっています。

 皆で話し合う場でのリーダーの影響

 ミーティングなど話し合いの場で,各メンバーの意見は出尽くしているでしょうか。決定事項に対しての納得感やコミットメントはどうでしょうか。
 聴き上手なリーダーがいるだけで,自由闊達な議論や意見交換がなされ,各メンバーの考えが反映された“チームの決定”が成立するものです。メンバーは,たとえ自分の考えとは違う決定だったとしても,「自分の考えは皆にわかってもらえた。その

うえで決まったことだ」という納得感が得られるものです。そして,その決定に従おう,力を尽くそうというコミットメントにつながります。
 影響力の強いリーダーが聴き上手だと,誰もが自分の意見を言うし,他者の意見もきちんと聴くという場の雰囲気が醸成されるものです。

 話を聴いてもらえたメンバーはどんな思いか

 リーダーが聴き上手であれば,報・連・相やミーティングでのコミュニケーションは質・量ともに高まり,チームのパフォーマンスも向上します。もうひとつ強調しておきたいのは,メンバーの話を聴いてあげること自体に価値があるということ。メンバーは話を聴いてもらえたことで,次のような心理効果を得られます(図表1参照)。
● カタルシス(浄化)効果
 誰かに話しただけで悩みの大半は解決する,ともいいます。抑え込んでいたいろいろな思い,もやもやなどを吐き出せて,すっきりした気持ちになれるのです。すっきりすれば,冷静な思考を取り戻し,前向きに考えるための準備が整います。
● アウェアネス(気づき)効果
 「話していて気づいたのですが……」という言葉もよく耳にします。話し手は,自分で話すことを自分の耳で再確認しています。自分の考えや心情などが整理され,気づきが得られるのです。
● バディ(仲間)効果
 「聴いてくれてありがとう」という気持ちになったことはないでしょうか。自分をわかってくれる(理解してくれる)人がいるだけで,勇気が湧いてきます。聴いてくれた相手に信頼を寄せ,「ひとりじゃない」という実感が持てるようになります。

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