2.仲良しクラブの勘違い


 チームで仕事をする場合,メンバーどうしの人間関係がよいにこしたことはありません。所属メンバーが互いに悪口や陰口を言い合っているチームでは,協力し合って大きな成果を達成することなど望むべくもありません。

◆ 成果よりも人間関係?

 実際にアンケートをとってみると,部下や後輩,チームメンバーへの仕事の指示をする際に,成果をあげることを強く求めるよりも仲間との人間関係を大切にするビジネスパーソンのほうがかなり多いことがわかります。チーム内の人間関係がよくないと互いのコミュニケーションもとりにくくなるし,協力関係も築けないということが経験的にわかっているのでしょう。

◆ 他人に気を遣いすぎる弊害

 ここで気をつけなくてはいけないのは,相手に気を遣うあまり言うべきことを言わないで済ましてしまうということです。これではいくらよい人間関係が築けたといっ

ても,それはうわべだけのつき合いの問題になってしまっているということです。
 あくまでも一般論ですが,わたしたち日本人は周りの空気を読んで自分の言いたいことも言えないという傾向が見受けられます。仕事をするうえで言うべきことは,それがみんなから反対されるような考えでもはっきりと述べることが大切です。


◆ 仲良しクラブに欠けているものは

 社員たちで構成されるチームの目的はなんでしょうか。それは,その部課に与えられた目標を達成することです。営業部は売上,利益,代金回収率など。製造部に与えられる目標は品質の向上,納期通りの生産などです。これらの課題を達成するためにどうするか議論を戦わせ,努力すること,互いに協力して目標達成をめざすことが大切です。メンバーどうしが仲のよいだけのチームでは,これらの課題をあえて避けてしまうことになりかねません。

◆ 仲良しクラブから目標に向かって行動するチームへ

 アメリカの心理学者ブルース・W・タックマンが提唱した「チームの成長」という考え方があります。それは初対面のメンバーがチームを組み,一緒に仕事をしていく過程で,どのようにチームが成長していくかを模式化したものです。チームができてから成長・進化し最後に解散するまでの過程を5つの段階に分けたもので,自分のチームはどうあるべきかを考えるうえでたいへん参考になるものです。
 ぜひ下の表の「4.機能期」のチームへの成長を願って行動してみてください。

 1.形成期 (Forming)

 メンバーどうしは初対面かそれに近い関係で,互いのことをよく知らない段階です。自分以外はどのような人物であるかを探ろうとする心理が働きます。
 ここでは積極的なコミュニケーションをとって仲間意識を芽生えさせたり,新参者にはていねいな指示をしたりして,チームへ貢献する仕事をしてもらうことが大切です。

 2.混乱期 (Storming)

 チームでの活動にも慣れ,メンバーが徐々に自分の意見を示すようになるため意見の対立が生まれます。
 ここでは議論を押さえつけようとするのではなく,どんどん本音を戦わせることが大切です。

 3.統一期 (Norming)

 仲良しクラブとも形容される段階。
 チーム内の役割分担が公式的にも非公式的にも定着し,仲間意識が生まれます。たいへん心地よいチームですが,ぬるま湯につかったようになりやすいためチームの目標を再確認するなどが重要です。

 4.機能期 (Performing)

 チームの目標を達成しようとする使命感が生まれ,指示されなくても動く自律性がメンバーに生まれます。メンバーは危機感を共有し,最も高い成果をあげる段階です。

 5.散会期 (Adjourning)

 案件が完了したプロジェクトチームや人事異動によって部課単位のチームが解散する場合があります。

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