リーダーシップとマネジメントの機能


(1) マネジメントの機能

 リーダーシップと似た機能としてマネジメントがあります。
 6ページで述べたように,リーダーシップは,メンバーに目標達成を促すよう影響を与える機能です。メンバーの一人ひとりの方向性が定まっておらず,気持ちが揃っていないときに,目標達成に向けた方向性を与え,一つにまとめる機能のことをいいます。
 これに対し,マネジメントはメンバーが一つの方向に向かって動き出し前進しているときに,人と仕事の管理を通じて,業務のPDCAサイクルをうまく回し,効率的な業務遂行ができるよう管理することをいいます。

(2) アポロ計画でのケネディの役割がリーダーシップ

 1961年5月25日上下両院合同議会での演説で,アメリカ合衆国大統領ケネディは,“First, I believe that this nation should commit itself to achieving the goal, before this decade is out, of landing a man on the Moon and returning him safely to the Earth.”と言って,1960年代中に人間を月に到達させるとの声明を発表しました。そして,8年後の1969年7月20日,宇宙飛行士アームストロングとオルドリンの2名がアポロ11号で月面に着陸しました。
 ケネディ声明は当時,本当に実現できるかは,だれもわからなかったのですが,ケネディのリーダーシップにより一つの方向性が与えられたことで,国をあげての大プロジェクトが動き出し,遂に公約どおり実現したのです。このケネディ大統領(当時)の行動こそがリーダーシップの発揮といえるでしょう。

(3) NASAのマネジャーが果たした役割がマネジメント

 ケネディ声明を受け,NASAのマネジャーなど幹部たちは,ケネディ声明の内容をアポロ計画「1960年代中に人間を月に到達させる」に落とし込み具体化しました。計画実現のため,NASAは段階的プロジェクト計画法(図表4)というマネジメント手法を開発し,この手法により,計画を推進しました。段階的プロジェクト計画法

は,システム開発の過程をいくつかのフェーズに分け,フェーズごとに作業内容を明確化し,フェーズ完了時に後工程のフェーズ移行の可否を判断しながら進行させる方法です。結果としてアポロ計画は,スペースシャトルの開発にともない,電子工学や遠隔通信技術,コンピュータ制御など関連技術の発展に大きく貢献しました。

(4) 現場ではリーダーシップとマネジメントの両面が求められる

 リーダーシップとマネジメントは別ものですが,一般に管理・監督者の業務について,リーダーシップという言葉が使われるとき,マネジメントと混同して使われることが多いのも事実です。しかし,リーダーシップもマネジメントもともども,管理・監督者には求められていることを知っておいてください。
 マネジメントでは,仕事の管理と人の管理が重要なポイントとなります。仕事の管理は,Goal(目標の設定)➡Plan(計画立案,方針作成)➡Do(方針の実践)➡Check(予算・進捗管理と分析,実践上の問題点の抽出)➡Action(改善…課題実践,その施策の次の方針への反映)➡次のPlan(次年度の計画など)というPDCAサイクルを回すことです(図表5)。
 人の管理では,人の配置,職場環境の整備,動機づけなど業務に直結する取り組みや部下の業務内容,進捗などを管理する業務があります。また,中長期には大きな影響を与える人材育成なども,マネジメントの役割といえます。

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