1 OJTということばの意味を正しく理解しよう

◆ 経営教育の中のOJT

 OJTということばは,経営社会では,英語であるにもかかわらず,テレビ,パソコン等と同様に日本語化していますから,改めて説明する必要もないかもしれませんが,全体的に意味の理解を統一するために,あえてはじめに明示することにしました。
 OJTとは,言うまでもなく,On the Job Training(またはTeaching)の頭文字を取った略語です。Onとは「…しながら」という意味ですから,仕事(Job)をしながらの教育(Teaching)または訓練(Training)ということになります。昔ながらの日本語では「職場教育」または「現場教育」ということになります。
 企業経営の教育は図表1のように多岐にわたっていますが,OJTは人事・教育のスタッフが行う「職場外教育」(Off JT)とは異なり,職場の上司(管理者・監督者)やリーダー,先輩が日常的に行うもので,経営教育の本命とされています。
 会社としての教育の中では,OJTは実に99%を占めているといっても過言ではありません。
 そのOJTをより良いものにするためには,個人個人の自己啓発,そして有志グループによる相互啓発を不断にすすめることが不可欠というわけです。

◆ OJTの 3側面

 ところで,そのOJTですが,大きく分けて3つになります。
 手に手をとって,マン・ツー・マン・コーチ(個別指導)をするのが「手のOJT」といわれるものです。人間は一人ひとりが微妙に違いますから,それぞれの個人差,あるいは個性に応じてコーチをするのが個別指導です。
 次は「口のOJT」といわれるもので,上司やリーダーがことばを用いてコーチをするOJTです。朝礼,職場ミーティング,個人個人に対する説明,説得,あるいは,ほめたり叱ったり,注意したりするのもこれに入ります。
 3つ目は,「背中で教えるOJT」あるいは「全身によるOJT」といわれるもので,一般的には「示範」といわれます。上司・リーダー・先輩たちの一挙手一投足が

,OJTと意識していない一言一行が,そのままOJTとなっているものです。
 これら3つのOJTは別々のものではなく,一体化したもので,時に応じて現れる別の面を示しているというべきでしょう。

◆ OJTはライン・リーダーの日常教育

 日本は教育に熱心な国であり,保育園,幼稚園から数えると,大学を出るまでに20年以上も学校通いをするために,教育といえば,学校教育の机に向っての座学を連想してしまうクセがあります。
 企業経営の場合も,「うちの会社はあまり教育をしていない」などという人がよくいますが,この場合の教育は教育スタッフが中心になって実施する集合教育というOff JTをいっているのです。しかし,Off JTは教育全体の1%くらいのもので,残りの99%はOJTなのです。教育スタッフのやる座学中心のOff JTは例外であって,上司・リーダー,先輩による日常的なOJTこそが本命です。しかも,教育しているつもりはないのに教育している「示範」が重要です。感化に勝る教育はありません。
 示範は無意識教育ですから,その人の人柄人間性が自然ににじみ出てくるので,嘘やかくしができません。子供が自然に親から学んでいるのと同じことです。したがって,上司,リーダー,先輩の修業,勉強,成長と正比例してOJTは発展していくと考えていいでしょう。自分が成長しない限り,部下,後輩を成長させられないと思うべきでしょう。自分がレベルアップすれば,部下,後輩もレベルアップしていくと思えばうれしくもなります。

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