1 「問題」とは何か――「問題」を特定する

◆ 問題とは何か

 「企業とは解決すべき問題の集合体」といわれます。職場では,実にさまざまな問題が発生しています。こうした問題を的確に解決していくことが,管理監督者(リーダー)には求められています。
 ところで,私たちが毎日のように口にする「問題解決」とはどのようなことを指しているのでしょうか。わかっているようで案外明確ではありません。「問題解決とは問題を解決すること」というような,あいまいな理解のままに,問題解決に取り組んでいる場合が多いものです。
 まず「問題」とは何かを考えてみましょう。問題とは「基準(目標)と現状の間のギャップ」ととらえることができます。ギャップの生じている現象,事柄はすべて問題になります(図表1)。では,「基準(目標)」とは何でしょうか。
 実現すべき状態,達成すべきレベル,あるいは“あるべき姿”のことです。こうした基準(目標)といまの状態のズレが「ギャップ」,すなわち「問題」です。「問題解決」とは,こうした「ギャップ」が生じている「原因」を解明して,手を打つことといえます。
 「業務の引き継ぎがうまくいかずお客様に迷惑をかけている」状態があります。これは「問題」ではなく,「現状」を表しているにすぎません。この場合の「あるべき姿」(目標)は,「引き継ぎをしてもお客様に迷惑をかけることがない」という状態です。という

ことは,「現状」と「目標」のギャップである「問題」の表現としては,「お客様に迷惑をかけない引き継ぎができていない」や「お客様に迷惑をかけない引き継ぎのしくみが必要である」になります。「問題」の表現のほうが,「現状」を説明した表現より具体的で,原因や解決策に近づいたものになります。

図表2

5W2Hのチェックリスト

When (時期,期限,順序)

いつしているのか/期限はいつまでか/どんな順序でするのか/順序を入れ替えたらどうか

Where (場所)

どこでしているのか/なぜその場所なのか/もっとほかに適当な場所はないのか

Who (担当者,責任者)

誰がしているのか/なぜその人なのか/もっとほかに適当な人はいないのか

Why (目的,理由)

目的は何か/何のためにそうするのか/なぜそれが必要なのか

What (対象)

対象は何か/どんな働きをしているのか/それを除くことはできないか

How (手段,方法)

どんな方法でやっているのか/なぜそのやり方なのか/もっとほかに適当な方法はないのか

Howmuch (費用)

費用はいくらかかっているのか/なぜそれだけかかるのか/も っと安くならないか

図表3

事実をとらえるための質問

基本の質問
(自問も含めて)

・いまやっている仕事のねらいは何か?
・その仕事は何のためにやっているのか?
・やっている仕事の成果はどのような「評価項目」「評価基準」で
 測るのか?

仕事そのものに対して

・あなたの仕事の中でいちばん重要なものは何か?
・その仕事はうまくいっていると思うか?
・仕事の善し悪しを測る「評価項目」は何か?
・「評価の尺度」「評価の基準」は何か?

報告内容に対して

・何が,どう問題なのか?
・原因は何か? 因果関係はあるか?
・事実を裏づけるデータはあるか?
・平均化しているか? バラツキはどうなっているか?
・層別はできているか?
・「応急処置」か? 「恒久処置」か? 「再発防止策」か?
・同じような問題がほかにはないか?

提案内容に対して

・何のためにやるのか?
・その期待される効果は何か?
・どんな「評価項目」「評価基準」で測るのか?
・代替案は検討したのか?
・その提案(改善)によるリスクはないか?


◆ 問題解決には「問題」の特定が大事

 問題解決をしていくためには,まず「問題」を「問題」として特定する必要があります。そのためには,問題となっている事実を正確に把握しなければなりません。「事実」をとらえることは,簡単そうにみえますが意外に難しいものです。
 「5W2Hのチェックリスト」(図表2)や「事実をとらえるための質問」(図表3)などを活用して,問題を特定するための作業をていねいにおこないます。このところがいいかげんだと成果のあがる問題解決につながりません。5W2Hは基本的ですが,最も使いやすいフレームワークといえます。

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