1. レジリエンスとは何か

 多くの業界が変化にさらされ,働く人の多くがストレスやプレッシャーを感じています。昨年の12月には,労働者が50人以上いる事業所では,メンタルヘルス不調を未然に防ぐための仕組みとして「ストレスチェック」が義務化されました。このことからもわかるように,健康な心を維持することは今後ますます重要になってきます。
 そんな中,話題になっているのが「レジリエンス」です。これは人の「精神的な回復力」や「再起力」を意味する用語で,心理学において30年以上研究されてきました。最近では,海外の有名企業がグローバル人材の育成のためにレジリエンス研修を導入しています。国内でもNHK『クローズアップ現代』で特集され,新聞や雑誌などでもよく取り上げられるようになりました。

◆ リーダーにこそ「逆境から立ち直る力」が求められている

 仕事でつまずいたときや,職場での人間関係でうまくいかないとき,業務成績が伸び悩んでいるときには,精神的に落ち込むことがあります。とくに最近では,折れやすい心を持つ若手社員が問題になっていて,上司も部下の扱いに困っています。
 ところが,レジリエンスの高い人は失敗しても落ち込み続けることがなく,再起することができます。めまぐるしく変化し,ストレスの多い社会でも,ストレスに負けない強さを持ち,タフに仕事を続けていくことができるのです。
 レジリエンスの高い人は,次の3つの力を持っています。

 @ 逆境や困難に直面しても,元に戻ることができる「回復力」
 A 強いストレスにも耐えられる,弾力性のある精神を持つ「緩衝力」
 B 新しい環境や予期せぬ変化を受け入れて対応できる「適応力」

 これらはすべてのビジネスパーソンにとって必要なものですが,とりわけ職場でリーダーの立場にある人や管理監督者の責務を与えられている人に大切なものです。
 リーダーは,日々の仕事の中でストレスやプレッシャーが絶えません。そして,達成を求められる課題を常に抱えています。リーダーにこそ,失敗や困難を克服し,精神的に回復する力であるレジリエンスが求められるのです。


◆ レジリエンスが必要な3つの理由

 現代のビジネス社会で働く人にとって,レジリエンスを高めることが重要な理由をもう少し掘り下げてみましょう。その主な理由として,3つあげられます。
 1つ目は「ストレス耐性」です。多忙なことや人間関係などによるストレスのために,精神が疲労している人が増えています。うつ病は社会問題となっており,とくにミドル社員は「中年の危機(働き盛りの中年期に訪れる精神的な危機)」に直面するので,注意が必要です。健康でイキイキと働き続けるためにも,精神的なたくましさであるレジリエンスを身につけることが欠かせません。
 2つ目は「変化への適応」です。仕事においては,異動や転勤,子会社への出向,組織改革など,さまざまな変化があります。グローバル化が加速することで,業界の変化のスピードも増しています。レジリエンスの高い人は,そのような変化に抵抗するのではなく,柔軟に適応することができるのです。
 3つ目は「目標・課題の達成」です。キャリアや実績を重ねるにつれて,より複雑な課題や達成困難な目標が与えられます。リーダーの立場にある人であれば,それらにチャレンジすることから逃げるわけにはいきません。レジリエンスの高い人は,困難やリスクがあってもそれを回避せず,壁を乗り越えて目標を実現する力があります。

 私は多くの企業でレジリエンス研修を行った経験から,まじめで頑張り屋な人ほどレジリエンスを高める必要があると考えています。なぜなら,失敗をしたときに自分を責めて,他人を頼ることができず,一人で悩んでしまうからです。

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