2. 教えたことを忠実に守らせることの難しさ

 私は研修講師として人に教えることを仕事にしていますが,その仕事先の幹部のかたが「問題は,研修後にどれだけ実践してくれるかなんだよね」という話をよくされます。そのとおりでして,企業人は学んだことを仕事に活かしてナンボなのです。
 しかし,学びを活かして結果を出す人と,学んでも仕事にうまく活かせない人がいます。その差はどこにあるのでしょうか。

◆ 自分勝手な解釈・判断と自己流のやり方

 せっかく学んでも,それを仕事に活かせない(結果を出せない)人に多いのは,まず教えてもらったとおりにやろうとしないパターンです。「そんな面倒なことしなくても,こっちのほうが早いよ」「理屈はわかるが,ここはこうしたほうがウチに合うな」と,自分に都合のいいように解釈・判断し,教えたことを守らなかったり手を抜いたりするから,思うような結果が出ないのです。
 要するに自分勝手に「教えの是非」を判断するというのが,結果を出せない人の特徴なのです。教えるほうから言わせてもらうと,1つひとつの工程には,ちゃんと意味があり,それを飛ばしてしまうと支障をきたすから,そのとおりやりなさいと言っているわけです。さらに,教わったとおりにやらない人には,2つのタイプがあります。

◆ 無知蒙昧と,変な自信家が危ない

 1つのタイプは「無知蒙昧型」です。やるべきことの正しい判断を下す知識や十分なスキルを持たず,楽をしたい一心で,勝手に手順を飛ばしたり,抜いたりしてしまう。判断に必要な基礎的素養がないので,正常な判断などできるはずがありません。
 こういうメンバーに対して,リーダーは「楽をして良い結果だけ求めようとしても,うまくいくはずがない。結果を出すには相応のプロセスが必要であり,教えたとおりやりなさい」と強く意思を示し,伝えてください。
 もう1つのタイプは「自信たっぷり型」です。知識や経験が豊富で,要領がよい人です。こういう人は,少し教わると,「わかった。これはこういうふうにアレンジすればいい」と,さもすべて理解して事の真理を見極めたかのように,すぐに自分流に変えてしま

う。そして結果が出ないと,「このやり方は,ウチには合わない」などと他責にする。
 リーダーは,「自己流は無手勝流です。はじめからわかった気にならず,教わったとおりにやってみましょう」と諭してください。

◆ 楽をしたい,自己流でやりたいという横着さを見抜け

 どちらのタイプにも共通していることは,師の言いつけを守らずに,勝手に判断していることです。私自身,こういう経験があります。
 「問題解決の合理的なステップ」を指導したときのエピソードです。そこでは,@問題をあげる(そのまま板書する),Aあがった問題を誰もがわかるように書き直す(板書した文を書き直す)と教えています。なぜこの2つがいるかといえば,問題をあげるといっても,第一段階では問題かどうかもわからず,それを第二段階の書き直す作業をすることで,メンバーの目線が揃い,「問題なのか,単なる愚痴なのか」も判断できるからです。ところが,ある受講生から「やってみたけど,うまくいかなかった」という報告を受けました。ヒアリングしてみると,すぐに原因がわかりました。
 その受講生は,@Aのステップを踏襲せず,はじめから「誰もがわかるような表現で問題を出せ」とやったのです。そのほうがステップが省けて進行が早くなるから,というわけです。その結果どうなったか…,問題が出ませんでした。出ないのは問題がないわけではなく,「誰もがわかるような表現で…」がネックになり,出しづらかったのです。ステップには意味があり,だからこそ合理的なのです。
 教えたのにそのとおりやらないというのは,意思疎通が不十分ということですから,指導の仕方を見直す必要があるでしょう。

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