1. いま問われるリーダーの意思疎通力とは


◆ リーダーは専門能力があるだけでは物足りない

 リーダーになる人というのは,相応の強みを持っているものです。たとえば「モノを売らせたら自分がいちばん」「これをつくらせれば誰よりもうまくできる」「この領域についてここまで熟知しているのは自分だけ」といった,社内ナンバーワンやオンリーワンの高い専門知識・スキルなどです。
 ところが,その分野で高い専門能力を持っているのに,対外的な発信が上手にできない,つまり発信力が不足しているために,せっかくの能力を埋没させてしまっている人も少なくありません。非常にもったいないことです。リーダーは,ただ専門能力があるだけではダメで,それを効果的に発信しなければ認知されないのです。
 自分には情報発信力が十分ある,と自信を持っている人でも,周囲から見ると「言っていることがわかりにくい」「一方的に話すばかり…」などと評価されているかもしれません。人の間に立って,情報の受発信を上手にしていくこと,つまりは意思疎通することが重要なのであり,そのことがリーダーには必ず求められるのです。

◆ 「意思疎通不全」の職場

 よく見かけたり,聞いたりする「意思疎通不全」の例です。
・メールのやり取りやネットの情報に頼り,現場・現物・現実から離れている
・会議で決めたことが,いつの間にか元に戻っている
・朝礼で伝えたことが,午後にはすっかり忘れられている
・指示したことが,なかなか徹底されない
・言ったことに対して「もっと早く言ってくれれば」と言い訳が聞かれる

 こんな様子が見られる(聞かれる)職場には共通点があります。コミュニケーションが一方通行で,双方向になっていないのです。
 「自分はあのときこう言った」「メールで伝えた」「やってほしい仕事は手渡した」…。ところが相手は「そうは聞いてない」「急ぐと思わなかった」「このやり方でよいと思った」などと,本当には伝わっていない。これは本来,コミュニケーションとはいえま

せん。コミュニケーションの基本的な目的・機能である意思疎通とは,思いが通じ合っていることであり,相互理解ができていることを意味します。

◆ 信頼がなければ,意思疎通も成り立たず

 有能と思われるリーダーの下でも,このような意思疎通不全が起こるのはなぜなのか? もちろんその原因はさまざまですが,ひとつこれだけはいえます。
 リーダーとまわりの人の間に“信頼関係”ができていない。
 周囲の人が「あの人は信用できる。言うことがぶれないし,自分たちのことをいつも気にかけてくれる」と思っているなら,リーダーが何か言う度に耳を傾け,注目してくれます。しかし,逆に「かっこいいことばかり言うが,自分では手を汚さない人だ」と思っていれば,聞くふりをするだけで,本気で行動しようとはしないでしょう。
 こういうリーダーは,その原因が自分の言い方にあると勘違いし,「何を言えば」「どのように言ったら」というテクニックのせいにしてしまいがちです。
 日頃から人との関わりを通して信頼を築いておけば,コミュニケーションはずっと楽になるはずです。
 上の図に示したように,リーダーシップを発揮するとは,フォロワー(メンバー)に働きかけ,目標に向かわせることです。メンバーに動いてもらうには,指示内容を明確に伝えることはもちろんですが,メンバーが自ら動きたくなる動機づけが欠かせません。メンバーを目標に向かわせるためには,まず意思疎通が不可欠であり,その根底にあるのが相互信頼(信頼関係)であると,あらためて認識してください。

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