2. メンバーの主体性を引き出すための「伝え方」

 メンバーのモチベーションを高めて,主体性を持たせるには,それを引き出すための「伝え方」をする必要があります。

◆ 自己表現には3種類ある

 臨床心理学者の平木典子氏は,自己表現を次の3つに大別しています。

@ 非主張的(non-assertive)
 自分を抑えて相手を立てる。文字どおり,「黙る」「譲る」「言いなりになる」「とりあえず波風を立てない」「自分を軽視する」自己表現。言い換えれば,「自分を他人に知らせていない」状態。
A 攻撃的(aggressive)
 文字どおり,「言いたいことを言う」「自分を通す」「相手を尊重しない」「相手を操作する」自己表現。言い換えれば,「相手の気持ちを考えない」状態。
B アサーティブ(assertive)
 「自分の気持ち・意見を言いつつ,相手の言い分にも耳を傾ける」自己表現。この表現を用いることができる人は,(1)自分の気持ち・意見を把握している,(2)伝えてみることに躊躇がない,(3)相手の反応に応える用意がある,という3つの作業ができている。
 リーダーであるあなたが,メンバーにAの攻撃的な自己表現をしているようでは,彼らのやる気を高めることはできません。メンバーには,Bのアサーティブな自己表現を用いて接するようにしましょう。

◆ 「アサーティブな自己表現」をするには

 たとえば,なかなか納期までに仕事を終えることができないメンバーには,自分の気持ち・意見をどのように伝えれば,改善を促すことができるのでしょうか。
 私が見る限りでは,「ばかやろう!いつも締め切りを破りやがって」「どうして,締め切りを守ることができないんだ?」などのように伝えてしまうリーダーが多いようです。

DESC法

@ D:Describe
 (描写する)

自分が対応しようとする状況や相手の行動を描写する。 感情を込めず,客観的・具体的に特定の事柄を描写する。

A E:Express
 (表現する)

状況や行動に対する自分の気持ちを表現する。特定の事柄 に対する自分の感情を冷静・建設的・明確に述べる。

B S:Suggest
 (特定の提案をする)

相手にとってほしい行動・妥協案・解決策を提案する。 具体的で,現実的な,小さな行動変容を明確に提案する。

C C:Choose
 (選択する)

肯定的,否定的結果の予測を行い,前向きな選択肢を示す。

 このように言いたくなる気持ちもわからないではないですが,こうした「攻撃的な自己表現」をしていては,メンバーは萎縮するばかりで,やる気や主体性のある行動は引き出せないでしょう。
 すなわち「攻撃的な自己表現」ではなく,自分の気持ち・意見を言いつつ,相手の言い分にも耳を傾ける「アサーティブな自己表現」をして,メンバーにみずからの行動を変えるよう促すのです。
 平木氏は,アサーティブな自己表現には,上の表にある「DESC法」を使って話を組み立てるとよいと指摘しています。
 今回の例であれば,次のようにするとよいでしょう。

@D:「納期までに仕事を終えることができなかったのですね」
AE:「あなたの活躍を期待していたのに,私はとても残念です」
BS:「どうしたら納期までに仕事を終えられるか,私といっしょにプランを立ててみ
   ませんか」

CC:【Yesなら】「ありがとう。では,いつからはじめましょうか」
   【Noなら】「そうですか。まずは自分で考えてみたいのかな。では今後,納期を
        守るためのプランを具体的に考えて,明日の午後3時までに私に提出
        してください」

 「攻撃的な自己表現」と比べて,どちらがメンバーの主体性を引き出すかは,明らかです。みずからの伝え方をアサーティブにするよう心がけてください。

表紙へ戻る

Page 1.

Go to Page 2.

 

 

目次へ戻る